『LOST10』奥寺佐渡子×塚原あゆ子が目指した新たなサスペンス 「同じことはやりたくない」

「私が考えるより、世の中のリアルは奇想天外」

――第1話では、小駒のトラウマのような描写が映し出されることになります。
塚原:トラウマ自体はキャラクター設定の中にありますよね。
奥寺:話し合いしつつ、生まれてきたものですよね。小駒自身にも乗り越えるものがないと事故を送っていくだけになってしまうので、じゃあどうしようかという話をしていた中で出てきたと思います。
塚原:素敵なCGマンがこのチームにいて、北海道のCGを先んじて作ってくれたんです。何も始まってないときに勝手にCGが送られてきて、流氷のすごい画があって。「冬じゃないんだけどな……」とは思ったんですけど、それが捨てがたく。あのトラウマに入ってる流氷は彼発信で、北海道といえば流氷とクリオネみたいな発想だったと思うんですけど。そういった北海道らしさで紐づいてくる発想力を逃さないように、イメージとして使ってもいいかなと思って入ってたりします。
――北海道を舞台にするという着想は、どういうところから始まったのでしょうか?
塚原:北海道って、いつ出ましたっけ? 初めからあった?
奥寺:初めからあったような気がする。
塚原:北海道と沖縄という話もあったような。山だったらなんでもよかった。
奥寺:自然の中でやろうということか。
塚原:スタッフからは奄美大島という案も出ていたんですけど、夏の奄美に3週間もいたら熱中症でバタバタとスタッフが倒れると言ったんですよ。北海道だったら涼しかったのでよかったですけど。
――そうすると最初から遭難というアイデアは。
塚原:ありました。
――何か着想のきっかけがあったんですか?
奥寺:どこから出てきたんだろう?
塚原:事件が始まる山の中は、誰も分からない、目撃者が少ないんですよね。今どきは防犯カメラの世の中なので、事件が起きた時に誰かの証言に頼らざるを得ない状況設定を作ろうと思うと、難しかったりするんです。だから思い切って山ということにしたように思います。第1話では遭難者のある人物が生き残りましたけど、第2話でその言い分がずれたりしたときに第三者がいれば、こっちの人が言っていることは正しいとなるんですけど、お互いが主張していた場合、保健調査員の直はどうするのか、警察の小駒はどう捉えるのかという差が出てくるんです。そこで防カメがない状況に落とし込むために、山だったんだと思います。
奥寺:携帯が使えないというのもそうですよね。
塚原:携帯が使えないのは大きいですよね。北海道の山の上は圏外でしたね。
――小駒とともに事故の真相を追う直の、フリーの保険調査員というキャラクター設定は珍しいですよね。
奥寺:保険調査員のお仕事は複雑です。ケースバイケースで、だからこそ面白いというか。一人ひとりを探っていく、刑事とはまた違う形での調査になるので、そこは書いていて面白かったところです。
塚原:保険調査員は動機で追う人たちなんですよ。お金という意味で、なぜそうするのかを動機で追っていく、警察とは全く違う考え方なんです。行動原理で追う刑事との発想の違いに興味があって、奥寺さんたちと一緒に実際の方に話を聞きに取材にも行きました。今後の放送で、「預金通帳を見ればその人の人となりが分かる」というようなセリフがあって。その警察とは違う発想の仕方をすることで、事故・事件を両側から見ることができるので。そこが面白いのかなと思っています。
奥寺:保険金詐欺って想像以上に多いんです。お金があるのに、さらにお金が欲しくて詐欺を働いたり、人を陥れたりする人もいて。動機とか全然分かんないなというふうに思うところもありましたね。
塚原:私が考えるより、世の中のリアルは奇想天外なことになっているのを垣間見ました。
「生きるということは失うこと」

――『LOST10』というタイトルに込めた思いを聞かせてください。
奥寺:最初はタイトルが全然決まってなかったんです。仮タイトルのままどんどん進めていって、アウトラインは決まってるんですけど、脚本を書いている間に話が全然変わっちゃうこともあるので、タイトルは後で考えようと。それから、本タイトルをどうしようかとなったときに、物語の中で誰かが何かを失ってることが多いということに、そのときようやく気づいたんですよね。失うということだけではなく、道に迷ったりとか、あとは自分の心を見誤ったり、勝負に負けてしまったり、いろんな“LOST”がある話ということで、『LOST10』に落ち着きました。
塚原:“LOST”という言葉が日本語訳になるといろんな形で形容詞としても使われている単語とおっしゃっていたのがインスピレーションにあって、サブタイトルも含めて1話ずつ10本の“LOST”にまつわる話になっています。連続性はあるんですけれども、それ以外にも1話1話の味わいが深くなればいいなと思って、本を深く読むのが楽しかったですね。
――今この作品を世に送り出す意義やメッセージ性をお2人はどのように考えていますか?
奥寺:この時代の不安みたいなものが少しでも映像に残せたらという思いはあります。社会に対する不安。人間関係における不安とか、何を怖いと思っているのかということです。何を信じたらいいのか分からないとか、そういう気持ちを残したいと思っていました。10年後の方が見ても2026年にはこういうことをみんな不安に思ってたんだ、ということを思い出してもらえれば嬉しいなと思っています。
塚原:“LOST”という単語が奥寺さんから出たときに、生きるということは失うことなので、いろんなものを失っていきながら生活していますけれども、その失っていったもの、失いそうになっているものを小駒と直が何を救い上げ、どういうふうに結末を迎えるのか。それは自分を救い上げる手でも、誰かを救い上げる手でもあるし、救えない手でもある。その生きるということの切なさ、やるせなさみたいなものが台本の中に溢れているんです。それがエンタメ性を持ちながら、金曜日に重くのしかかることなく救い上げる手を期待しながら、救われながら気持ちも明るくなる、ワクワクする1時間になるように描くことがテーマです。
――今語っていただいたようなことは事前にやりとりがあった上で、作り込んでいくものなんですか?
塚原:いつも意図とか話しますっけ?
奥寺:話さないんですよ。いつもこの作品のテーマを聞かれたときになんて答えたらいいんだと思って、いつも塚原さんとか新井さんが答えてくださるんですけど。
塚原:始まってすぐに小栗さんから、「この作品は最終的にどこに向かうの?」「主題、訴えたいことは何なの?」ということを聞かれました。いろんな意味の“LOST”という言葉に、深みや言葉の派生があることから、私はインスピレーションとしてたくさんの“LOST”がつく、物語における単語を思い浮かんでいたので、それがキャラクターに寄せていく場合もあるし、物語の中心であることもあるけれど、主題というふうにして、最後にこうせねばならないのだと謳わないのが奥寺さんの素晴らしさなんです。それよりも受け取る側に何かあるように作れたらいいと思っていて、小栗さんには最終回までまずは読んでみて自分で考えてもらいたいけれども、その中に言葉には落としていないはずですと。行間を共に読んで、そこの部分を育てて、最終的には視聴者の方々に解釈してもらうまでの物語にしましょうとお伝えした感じですかね。
――では最後に、これから初回を見る視聴者の方々にメッセージをお願いします。
奥寺:第1話では遭難救助ものだと思われるかもしれませんが、第2話からどんどん話のテイストや人物の印象が変わっていきます。小駒と直がどこにたどり着くのか、ぜひ最後まで見届けていただければと思います。
塚原:金曜の夜にぴったりなワクワクもあるし、土日に考察したい人はしてもいいし、お友達と月曜日にランチのときに「観た?」という話になるように作っているつもりです。それぞれの楽しみ方で観てくださったら光栄ですが、人間ドラマとして重厚な作品にもなっているので、気軽な気持ちで観て、金曜日の夜にみなさんが受け取ってもらえるものがあればいいなと思っています。
■放送情報
金曜ドラマ『LOST10』
TBS系にて、10月16日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:横浜流星、小栗旬、中村アン、飯豊まりえ、井口理、岩谷健司、野呂佳代、斉藤由貴、松下洸平、市川実日子、山本未來、吉沢悠、水橋研二、兵頭功海、金子昇、吉岡睦雄、森田想、柳憂怜、やす(ずん)ほか
脚本:奥寺佐渡子
演出:塚原あゆ子
プロデュース:新井順子
編成:荒木沙耶
音楽:ガブリエル・ロベルト
主題歌:Maya「LOST」(Sony Music Labels Inc.)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lost10/
公式X(旧Twitter):@lost10_tbs
公式Instagram:lost10_tbs
公式TikTok:@lost10_tbs


















