長谷川奈央×青木涼、『影を売る女』で向き合った“欲望” 「今日も私は照らされてる」
SNS時代に問いかける“平凡の大切さ”
―—劇中で重要な要素として登場する「女の勘、魔法の答え。」というキャッチコピーについても教えてください。それを提案して夕子が昇進していくシーンは、どこかAIや女性総理をイメージさせました。
長谷川:まさに現代だなと私も思います。あとは「女の勘」も「魔法」も女性が好きそうな魅力的なワードですよね。確証はないけど、これを言われると努力なしで成功できそうな気がする、不思議な力がある言葉のような気がします。
―—「女の勘」を持っていない青木さんはどう思いますか?
青木:やはりAIが何でも答えてくれる時代に対するアンチテーゼになっていると感じます。本作は「自分の道は自分で開く」という本当の成功や、コツコツと努力を続ける精神の素晴らしさを訴えかける映画でもあると思っていて。それって実力がなくても結果が返ってくるような生成AI、「勘」「魔法の答え」とは反対の概念のはずなんです。
―—「平凡も大切」みたいなトピックも出てきますね。SNSで自分を過剰に演出する風潮に対するメッセージも感じました。
長谷川:どれだけ派手かとか、視聴回数のために大切なものを売ってしまっていませんか、というのは現代社会へのメッセージだと思います。そういう傾向が広がっているからこそ、黒マントの男の「願い叶えますよ」という誘惑に応じやすくなっている。闇バイトもそうじゃないですか。価値観が唯物的に偏ると派手な暮らしがいい、お金を持っているのがいい、権力があるのがいいとなりますよね。もちろん「女性がバリバリ仕事する」ことは素晴らしいですが、形に囚われて「それがすべていいんだ」と錯覚したり、流されてしまっている部分が自分にもあって。だからこそ気をつけていきたいですし、この映画が問いかけていることでもあると思います。
不安な時代だからこそ見つめ直したい本当の“幸福”
―—ご自身にとって「影」とは何ですか?
長谷川:個人的な発見は「時間」ですね。平等に与えられているけど、それをどう使うかは自分次第。無駄にしたその時間自体が本当は貴重なもので、まさに「時は金なり」だなと。それに気づいたのは、疲れて「今日は休もう」と思ったときなんです。「今はできないけど、この時間は何かに活かせる時間でもある」と気づいたときに、時間はいかようにも変えられる概念なんだなと。意識しなければ存在していないかのように過ぎ去る、という点で影と同じだと思いました。
青木:影ってマイナスなイメージじゃないですか。「影が薄い」とか、人生の影というと挫折や苦しみのような印象がある。でも本作を通して、普段はなかなか気づけない「与えられているもの」や「生かされているもの」の象徴でもあるなと思ったんです。役作りを通して、「太陽の下で自分にもし影がなかったら」と考えてみたんですね。そしたらお日様の暖かさなど、「光」という存在に敏感になりました。考えてみれば「影がある」ということは、自分に光が照らされている証明でもあるんですね。
長谷川:確かに。暗闇にいたら影はできませんね。自分がどんな選択をしても、どんな風に生きたとしても必ず与えられているものがあって、いつも照らされている。
青木:例えば家族も切っても切れないけど、普段はなかなかその尊さについて考えない。ちょっと恥ずかしいですが、家族からの励ましの言葉や存在もそうだと思うんですよ。だから「影」って「今自分に与えられている大切なものがある」ということの象徴なのかもしれない。そう考えると愛おしい気持ちになりましたね。
―—確かに。夕子もそれを失って理解したと。
青木:この映画を観て「自分にとっての影とは何か?」とぜひ考えて、見つけていただきたいですね。
長谷川:現実に満足できなくても、夕子として存在する価値がある。この映画を観てくださる方にとっても、影を自分で見つけたときに、「今日も私は照らされてる」「生かされている」と感じていただけると嬉しいです。
青木:世相を見ると不安が増し、物価も上がったりして、自分たちの未来への不安感が大きくなっていく時代だと感じます。そういう時代だからこそ、平凡であってもその中に本当の幸福があるのではないかと、人生を振り返るきっかけにしていただきたいと思います。
■公開情報
『影を売る女』
10月16日(金)全国公開
出演:長谷川奈央、青木涼、田中宏明、芦川よしみ、目黒祐樹、田村亮
監督:赤羽博
原作:大川隆法
製作:幸福の科学出版
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
配給:日活
配給協力:東京テアトル
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