ガザ民間人虐殺の真相を暴く ヴェネチア映画祭審査員特別賞受賞『NAZA ナザ』緊急公開へ

ドキュメンタリー映画『NAZA ナザ』緊急公開

 第97回アカデミー賞受賞作『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』のイスラエル監督チームによる最新作『Naza(原題)』が、『NAZA ナザ』の邦題で10月24日よりシアター・イメージフォーラムほかにて緊急公開されることが決定した。

 本作は、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』で監督を務めた2名のイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァル・アブラハームとラヘル・ショールが、ガザ地区の監視や遠隔攻撃に直接関与したイスラエル軍の兵士や諜報員24名に対して行った極秘インタビューをもとに、ガザで行われている民間人虐殺の実態と、その背後にあるイスラエル国家が組織的に作り上げた“虐殺を可能にするシステム”を検証していくドキュメンタリー。『関心領域』のジョナサン・グレイザーが製作総指揮を務めている。

 タイトルの「NAZA」とは、イスラエル軍がハマスの構成員を攻撃する際に、犠牲になると予測する「民間人の巻き添えの数」を表す軍事用語。犠牲を人数ではなく「NAZA」と値に置き換えることで、民間人をひとりの人間ではなく“数字”や“図形上の点”として認識し、兵士たちが攻撃任務を作業のように遂行できるよう“システム化”されている実態が本作で明かされる。証言者たちはイスラエル当局に特定されれば報復を受ける危険があるため、匿名でインタビューに応え、その声や姿形には最新技術によるデジタル処理が施されている。

 監督の2人は「私たちはイスラエル人の映画製作者でありジャーナリストであるという立場から、ある使命感を持ってこの映画を制作しました。それは、私たちの国イスラエルが行っている、パレスチナ民間人の大量虐殺の背後にある『システム』を検証しなければならないというものです」と制作の決意を語っている。

 本作は9月に行われた第83回ヴェネチア国際映画祭で急遽プレミア上映され、史上最長となる25分間のスタンディングオベーションを浴びて審査員特別賞を受賞した。一方で、初上映からわずか2日後、イスラエルのネタニヤフ首相は本作と監督たちを苛烈に非難する動画をSNSに投稿。「国家に対する反逆」として彼らの国籍剥奪を表明するという異例の行動に出た。さらにこの発表の後、監督の両親が住むイスラエルの家には数十人の暴徒が押し寄せる事態にまで発展している。

 これに対し監督陣は「イスラエル政府による国籍剥奪の脅迫や殺害予告は、私たちの決意を変えるものではなく、映画を止めるものでもありません。連帯を示してくれた仲間たちに感謝するとともに、近いうちに世界中で『NAZA ナザ』が見られることを望んでいます」とコメントしている。

 また、『戦場でワルツを』の監督アリ・フォルマンをはじめとするイスラエル人の映画作家たち、『オールド・オーク』の監督ケン・ローチ、『アクト・オブ・キリング』の監督ジョシュア・オッペンハイマーら多数の映画人が監督2人を支持する声明を出している。

 本作は、The Guardianのウェブサイトで11月下旬から全編無料で配信される予定だが、“スクリーンで観る価値がある”という製作陣の意向を汲み、日本では配給会社のトランスフォーマーが9月下旬に権利取得してから約1カ月という異例のスピードでの劇場公開が実現した。『NAZA ナザ』の緊急公開にあたって、トランスフォーマーは「本作が本年度のヴェネチア映画祭で初めて上映された際、私たちは大変強い衝撃を受けるとともに、その重要性、そして絶対にこの映画を日本で上映しなければならないという使命感を強く感じました」「ヴェネチア映画祭終了後の9月下旬に配給権を得てから約1カ月後の一般公開は、おそらく日本では過去にあまり例をみない短さであり、そのため、上映・宣伝素材の手配から字幕翻訳、宣伝展開に至るまで、通常の公開のように日本向けに十分な時間をかけて準備することが難しい状況です。本来であれば時間を費やして行うべき様々な確認の時間が短くなってしまうことで生じるリスクもあり、私たち配給会社としても大変悩ましくはありましたが、本作については、それでも公開までのスピードを優先するべきだとの結論に至りました」などと声明を発表している。

 公開されたポスタービジュアルには、証言者がガザでの攻撃について説明する際に紙にペンで手描きした図が象徴的にあしらわれている。

映画『NAZA ナザ』予告編

 あわせて公開された予告編は、高層ビルが建ち並ぶ大都市テルアビブで、暗闇のなか監督ユヴァル・アブラハームと向かい合う証言者の口から衝撃的な言葉が次々と明かされていく、緊迫の瞬間が切り取られている。

『NAZA ナザ』緊急公開にあたって

本作が本年度のヴェネチア映画祭で初めて上映された際、私たちは大変強い衝撃を受けるとともに、その重要性、そして絶対にこの映画を日本で上映しなければならないという使命感を強く感じました。私たちが昨年配給した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の監督チームの一員でもあるユヴァル・アブラハーム、ラヘル・ショールの両監督が3年にわたり自らの身の危険を顧みずに続けた取材を通じ、ガザの空爆に関わるイスラエル兵や軍関係者が明かす攻撃の詳細と、それを可能な限り容易に遂行するために計算され尽くしたシステムは、身の毛もよだつような恐ろしさに満ちており、その勇気ある告発に世界中から賞賛の声が集まると同時に、両監督は反対派からの激しい攻撃にもさらされています。
一方、両監督をはじめとする製作チームは、事態の緊急性から本作を通常の公開スケジュールとは異なる形で一刻も早く世に届けたいと考え、11月からThe Guardian紙の公式サイトを通じた全世界での配信と、それに先駆けた異例のスピードでの劇場公開を模索しました。
日本の配給を任された私たちもその想いを共有し、通常のウィンドウとは異なる、できる限り早い劇場公開を願い、全国の映画館をはじめ各所へ相談をいたしました。そしてその結果、来る10月24日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか趣旨にご賛同いただいた全国の映画館で順次公開できる運びとなりました。ヴェネチア映画祭終了後の9月下旬に配給権を得てから約1カ月後の一般公開は、おそらく日本では過去にあまり例をみない短さであり、そのため、上映・宣伝素材の手配から字幕翻訳、宣伝展開に至るまで、通常の公開のように日本向けに十分な時間をかけて準備することが難しい状況です。本来であれば時間を費やして行うべき様々な確認の時間が短くなってしまうことで生じるリスクもあり、私たち配給会社としても大変悩ましくはありましたが、本作については、それでも公開までのスピードを優先するべきだとの結論に至りました。
製作者自らが「スクリーンで観る価値のある力強い作品」と自負する本作。映画館という特別な空間でのご鑑賞は、より作品に没入し、そこで語られる言葉と現実をより身近なものとして受け止める貴重な体験になると信じております。ぜひ劇場へ足を運んでいただき、今まさに続いているこの現実について、私たち自身に関わる問題として、今一度考えをめぐらせるきっかけにしていただけたらと願っております。
最後に、このような異例の形での上映を実現に向けて進められますことは、趣旨に賛同いただき、急なお願いにも関わらずご調整をいただいた全国の映画館の皆さまのご協力なしにはありえませんでした。また、上映を希望いただきながら、限られた調整期間のためにやむをえず断念された劇場の皆さまにも、心より感謝いたしております。
皆さまのお力添えに、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

2026年10月1日
株式会社トランスフォーマー

■公開情報
『NAZA ナザ』
10月24日(土)、シアター・イメージフォーラムほかにて緊急公開
監督:ユヴァル・アブラハーム、ラヘル・ショール
製作総指揮:ジョナサン・グレイザー
配給:トランスフォーマー
2026年/イギリス/ヘブライ語、英語/原題:Naza
©The Guardian 2026
公式サイト:https://transformer.co.jp/movie/naza/
公式X(旧Twitter):@nazamovie

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