中村倫也が『風、薫る』でみせる成熟した演技 “朝ドラ”とともに躍進した軌跡を辿る

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第19週では、新潟の村で赤痢が発生し、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が看護婦として現場に駆けつける。そこで出会う患者の一人が、中村倫也演じる柳生藤次だ。情報解禁から約3カ月、彼の登場を今か今かと心待ちにしていたのは筆者だけではあるまい。

 朝ドラ常連俳優は数多く存在するが、その中でもとりわけ朝ドラと深い縁を感じさせるのが中村である。18歳のときに中村友也名義でデビューすると、わずか半年後には『風のハルカ』(2005年度後期)への出演が決定。それもゲストや役名のない端役ではなく、ヒロインであるハルカ(村川絵梨)の従兄弟・神崎由紀夫役としてほぼ全編に登場していた。

 同作はNHKオンデマンドで配信されているので、デビュー当初の貴重な姿をぜひとも拝んでほしい。あどけなさが残る表情はもちろんだが、それ以上に目を奪われるのは、新人とは思えないほどの堂々とした演じっぷり。良い意味で力の抜けた自然体の演技で、由紀夫を等身大の青年として息づかせているのだ。当時、中村は共演者の渡辺いっけいに「友が作ってきた由紀夫は想像以上にマイペースで、最初は演出陣を困惑させていたけれども、最後までそれをやり通したことが友のすごいところだ」と褒められたという(※1)。演技の引き出しは今ほど多くはなかっただろう。それでも台本から得た情報を自分なりに咀嚼し、芝居に落とし込んでいく姿勢は当時から備わっていたことがわかる。

 その後は本人が“暗黒期”と語るように、なかなか日の目を浴びぬ時期が続くも、与えられたチャンスは決して無駄にしなかった。舞台『ライチ☆光クラブ』では、主人公・ゼラの暴力的なまでの美とカリスマ性、その奥に潜む脆さを怪演。『闇金ウシジマくん Season3』(MBS・TBS)では、巧みな表情の使い分けで二面性を持つ結婚詐欺師を、映画『孤狼の血』では、凄まじい気迫で狂犬と呼ぶに相応しいヤクザを見事に体現し、いずれも強烈な印象を残した。

 そんな着実に評価を高めていた中村のブレイクを決定づけたのが、『半分、青い。』(2018年度前期)だ。中村が演じた“マアくん”こと朝井正人は、「新しい犬が来ても、前の犬は捨てない」という、分かるような分からないような理論で何人もの女性と付き合っている大学生。普通なら、女の敵という最低な印象しか残らない。だが、中村は視聴者を不快にさせるどころか、人畜無害な顔をして独特のフェロモンを放ちまくり、あっという間にマアくんハーレムに引きずり込んでいった。当時、まだその言葉は生まれていなかったが、あれぞまさしく“メロ男”だった。『凪のお暇』(TBS系)、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)、『珈琲いかがでしょう』(テ東系)などでも発揮されることになる中村の“メロさ”を早くに見出したという意味で、同作は大いに讃えられるべき作品だと思う。

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