興収で読む北米映画トレンド

『モアナと伝説の海』北米No.1も興行収入は予想以下 続編ヒットが実写版の逆風に?

 ディズニーの実写映画『モアナと伝説の海』が、7月10日~12日の北米映画週末ランキングでNo.1に輝いた。北米3875館で、週末3日間の興行収入は4300万ドル。海外市場では5200万ドルを稼ぎ、全世界累計興収は9500万ドルとなった。

 本作は、2016年の同名アニメーション映画を実写化したミュージカルアドベンチャー。海に選ばれた少女モアナが故郷の島を救うため、半神半人の英雄マウイと大海原へ旅立つ。モアナ役には新人キャサリン・ランガイアが抜擢され、ドウェイン・ジョンソンがオリジナル版に続いてマウイを演じた。監督は『ハミルトン』(2020年)のトーマス・ケイル。

『モアナと伝説の海』©︎2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 4300万ドルという北米初動は、2025年の実写版『白雪姫』と同水準で、ディズニーが当初期待した6000~6500万ドルを下回るもの。世界興収も1億3000万ドル規模のスタートが見込まれていたが、こちらも及ばなかった。製作費は2億5000万ドルと高額、かつ宣伝費も1億4500万ドルにのぼるというから、コスト回収のハードルは非常に高い。

 現地メディアにおいて、本作はサマーシーズンの大型IP作品として『スーパーガール』『ミニオンズ&モンスターズ』に続く3作目の期待外れともいわれている。事実、北米市場全体の週末興収は、『スーパーマン』(2025年)がヒットした前年同週比マイナス38%だ。

 しかしながら、『モアナと伝説の海』がファンから熱狂的な支持を得ていることは確か。ディズニープラスではシリーズ累計で15億時間以上視聴されており、特にオリジナル版は長編映画の視聴記録No.1を保持している。

 実写版に足を運んだのも、まずは熱心なファン層が中心だったとみられる。Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ34%にとどまったが、観客スコアは91%と高評価。オリジナル版の89%、続編『モアナと伝説の海2』(2024年)の85%を上回った。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A-」を獲得している。

 観客の主な鑑賞動機は、「楽しそうだから」が39%、「好きなフランチャイズだから」が25%、「ドウェイン・ジョンソン出演作だから」が16%。年代別では18~34歳が全体の55%で、18~24歳が30%と最大層となった。

 男女比では女性が6割以上で、そのうち25歳以上が32%、25歳未満が31%という内訳。出口調査にて「ぜひ薦めたい」と答えた観客は全体の63%だったが、女性に限っては70%、しかも25歳以上の女性では78%に達していた。CinemaScoreでも、18歳未満から最高評価の「A+」、女性客から「A」を獲得している。

『モアナと伝説の海』©︎2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 すなわち、実写版『モアナと伝説の海』は、本来のターゲットであるシリーズのファン、もっといえば若年層と女性客――現在のハリウッドにおけるヒットの条件だ――を押さえることに成功した反面、より広い客層を今ひとつ捉えきれず、それが「ディズニーによる実写リメイク作品」としては今ひとつの出足につながったとみられる。

 大きな要因として挙げられるのが、『モアナと伝説の海2』との間隔が短いことだ。同作はディズニープラスの配信シリーズとして企画されていたが、のちに長編映画へと作り替えられ、第1作の8年後である2024年11月に公開されるや世界興収10億ドルを突破するメガヒットを達成。本作は、それからわずか約20カ月後の“新作”なのだ。

 実写版は当初2025年夏に公開予定だったが、1年の公開延期を経て、2026年7月10日に北米公開となった。クリストファー・ノーラン監督作『オデュッセイア』と、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』との激突を避けたが、『トイ・ストーリー5』と『ミニオンズ&モンスターズ』とはファミリー層を奪い合った。

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