アクション映画としての『Michael/マイケル』 ライブシーンに宿る監督の作家性

 『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)を皮切りに、アーティストの半生を描いた音楽映画が百花繚乱状態だ。

 『ロケットマン』(2019年)、『リスペクト』(2021年)、『エルヴィス』(2022年)、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2024年)、『Back to Black エイミーのすべて』(2024年)、『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(2025年)……。

 成功するたびに新しいトラブルが起き、身を削って乗り越えた先に伝説のステージが待っている。まるでジェットコースターのような、栄光とどん底のアップダウンこそが、このジャンルの王道パターンだ。ゆえに、その多くがアーティストの波乱万丈なトラブルを徹底的に描き、その葛藤を掘り下げる人間ドラマに重きを置いていた。

 だが、いま世界中で熱狂を巻き起こしているマイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』(2026年)は、少々毛色が異なる。マイケルが抱える心の葛藤は、厳格な父ジョー・ジャクソンとの確執という一点だけに絞り込まれているのだ。

 実はこれには、複雑な裏事情が絡んでいる。初期の脚本では、1993年に持ち上がった児童性的虐待疑惑や、ネバーランドへの警察の強制捜査による精神的ダメージなど、のちに彼を苦しめることになる出来事が描かれる予定だったという。しかし、告発者の一人との過去の法的和解の中に「映画内で一切の言及を禁じる」という条項が含まれていたことが発覚。これにより、関連するすべてのシーンが丸ごと削除されることになったのだ(※1)。

映画『Michael/マイケル』日本版本予告|6月12日(金)全国公開

 それに伴う大規模な脚本の改訂と追加撮影を経て、物語はバッド・ワールド・ツアーの幕開けと共に終わる構成に変更。おそらくその結果として、マイケルを悩ませるドラマが、父親との確執のみにフォーカスされる形になったのだろう。

 だが、複雑なストーリー展開やトラブルの羅列が削ぎ落とされたことで、「何を語るか」ではなく、「どう見せるか」に全エネルギーを注ぎ込んだ映画に仕上がった。そして、この「どう見せるか」という点において、監督を務めたアントワーン・フークアの作家性が爆発している。

 実はフークア監督自身、プリンスやスティーヴィー・ワンダーといったトップアーティストたちのミュージックビデオを数多く手がけ、キャリアをスタートさせた人物。マイケルがMTVの壁をぶち破り、ミュージックビデオをアートの領域まで引き上げていく時代を、現場の最前線で体感してきた。

 だからこそ彼は、マイケル役のジャファー・ジャクソンのキレッキレの動きを、最高にカッコいいアングルで捉え、最高に気持ちいいタイミングで繋いでいく。MTV全盛期の熱狂を知り尽くした彼の手腕が、端々にまで唸っているのだ。

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