『エラー』は“償えない罪”をどう描いたのか 畑芽育×志田未来が示した“許し”の可能性
主人公のひとりであるユメは、“間違った”という自責の念が人一倍強い。店の伝統ある継ぎ足しのスープを間違って捨ててしまい、バイト初日に逃亡した――というのが鉄板のやらかしエピソードなのだが、その根っこには、幼少期に父親を見殺しにしてしまったという消えない後悔がある。幼い日のユメは、暴力を振るいつづけてきた父を「助けない」選択をした。
さらには、自分の名前についても「生まれてきたことが夢だったらよかったのに」という意味で名付けられたのだと思い込んでいた。つまり彼女は、幼い頃からずっと自分を“間違った人間”だと思って生きてきたのだ。
ユメと付き合っていたケンケン(藤井流星)もまた、間違いを重ねつづけた結果、取り返しのつかないことになった人間である。もっとも、彼の場合は妻子ある身でありながら、ユメを騙して不倫していたので、自業自得ではあるのだが、ケンケンの「なんか、自分で自分を許してあげなきゃダメとかよく聞くけどさ、でもあれって多分、ある程度“出来た人の話”だと思うんだよね」という言葉には、妙な説得力があった。
とりわけ印象的だったのは、志田が演じる未央だ。被害者であり、加害者の娘でもある未央は、普段から感情を押し殺していたこともあり、一触即発の危うさを抱えたキャラクターだった。一言でいえば「ヤバい人」なのである。第5話「口がすべる」で、とうとうユメは真実を打ち明けてしまうのだが、未央は怒りを爆発させる。
けれども、唯一無二の友達となったユメとの思い出は何にも代えがたく、未央の心は複雑さを増す。しかもユメの母・千尋(栗山千明)を筆頭に、周囲の人々は口々にユメを責めるので、つい庇いたくなってしまうのだ。ユメが母を死なせたのは、あくまでも不慮の事故だったこと。母が亡くなる直前までユメが寄り添ってくれていたことを知った未央は、彼女を許そうとする。しかし「許したい」宣言も束の間、「やっぱ無理かも」とこぼした未央は、歩道橋の上からユメを突き落とす。これが『エラー』の面白さだ。
矛盾だらけの未央のぶっ飛んだ行動は、何を表していたのだろう。それは単に、視聴者の予想を裏切るためだけのギミックではない。未央が全身全霊で示したのは、「間違った人」を描いた本作の根幹にある二元論の否定だ。
選択には常に「正解」と「不正解」がつきまとう。けれど、私たちはそんな味気ない二択では括れない複雑な世界を生きている。未央はそのことを自らの生き様を賭けて証明した。「許したいけど、やっぱり許せない」という一見整合性のない彼女の想いも、きちんと成立するものであり、成立していいものだ。むしろ、そんな複雑さを失い、なにも感じなくなった状態を“エラー”と呼ぶのだろう。
最終回、事件現場となった屋上で、未央は「違う形で会えたらよかったね」と言った。それは裏を返せば「あなたと出会えてよかった」ということでもある。もう友達には戻れないかもしれないし、友達よりもっと深い関係なのかもしれない。
「おはよう」を交わしたあの朝から、ふたりの新しい関係がはじまる。
参照
※ https://note.com/nhk_pr/n/n191ce5b6e9ac
■放送情報
日10ドラマ『エラー』
TVer、U-NEXT、Prime Videoにて配信中
出演:畑芽育、志田未来、藤井流星、坂元愛登、北里琉、原田龍二、菊川怜、榊󠄀原郁恵、岡田義徳、栗山千明
脚本:弥重早希子
演出:山本大輔、的場政行
チーフプロデューサー:松崎智宏
プロデューサー:寺川真未、比屋根り子、川西琢、山崎宏太、綾川由里絵(エー・ビー・シー リブラ)
音楽:jizue
主題歌:UNFAIR RULE 「きずなごと」(スピードスターレコーズ)
制作協力:エー・ビー・シー、リブラ
制作著作:ABCテレビ
©ABCテレビ
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