『GIFT』は“関係性”を描くドラマだ 星々のような個が織りなす群像劇の真価
5月31日放送の『GIFT』(TBS系)第8話では、車いすラグビーチームのブレイズブルズが試練に見舞われた。
ポスドクの桜(宮﨑優)によって、週刊誌に伍鉄(堤真一)の告発記事が書かれた。いち早くそれを知った人香(有村架純)は、記事を差し止めてほしいと頼む。返ってきたのは「償ってもらいます」という拒絶の言葉だった。
外回りの軌道を経て、第1話の伏線が回収された第8話。ブルズのエースである涼(山田裕貴)にも試練は訪れた。身体に異変を感じた涼が告げられた病名は肥大型心筋症で、医師からは選手権への出場を止められる。
一人ひとりが困難に直面し、それらの中には人生の岐路に立つ選択肢も含まれていた。キャサリン(円井わん)は選手権をひと区切りにして、しばらく競技から離れるつもりだった。障がいを持ち、パートナーと協力しながら、子どもを産む選択について真剣に悩んでいた。
涼が圭二郎(本田響矢)に厳しく接するのは期待の表れであるとともに、焦りも透けて見える。自分がいなくなる未来を想像し、一日も早く圭二郎にエースになってほしい。期待に応えようとする圭二郎も空回り気味だ。圭二郎は、力づくでエースになろうと、シャークヘッドの練習に乗り込む。
『GIFT』を観ていると、人間は本来自由な生き物であることを思い知らされる。コートを離れればそれぞれの人生があって、チームで一緒にいるときも一人ひとり考えていることは違う。あたりまえと言えばそうだが、ドラマで描かれるような仕組まれた感情の連鎖と、予定調和の範囲の心地よい裏切りに慣れてしまうと、違和感を覚えても不思議ではない。
そういった登場人物のあり方を例えるなら「惑星」になるだろうか。“惑う星”と書くそれは、恒星の周りの軌道を一定周期で運行する。惑星同士の軌道は交わらない。惑星の周りには衛星があって、惑星の重力圏で運動をともにする。思い悩みながら、それぞれの軌道を進む私たちは惑星のようである。
作中でトラブルが起きたからと言って、必ずしもそれが意図したとおりに解決するわけではないのが今作の特徴だ。もちろん恒星にたとえられる主要人物と軌道が交わる地点では、ドラマが生まれる。涼から病気を打ち明けられた伍鉄が、何も言わずに涼の話を聞き、選手の特性を組み合わせた複数ラインを立案したことは、第8話の感動ポイントだった。
ある意味、観る側の目も試されている。たとえば、桜の告発に対して、伍鉄は第8話の最後まで知らずじまいである。勝手に人香が懸命に阻止しようとしている。わかりやすく伍鉄と桜をぶつける展開も考えられる中で、人香とのやりとりを通して、過去に向かっていた桜の視線が自分自身と未来を見つめるように変わる。個人の中の変化はあったかもしれない未来を示唆する。
いくつものラインを組み合わせて感情のうねりを作り出す手法は、群像劇の王道である。説明を排し、行間にメッセージをにじませている分、視点が分散しているのだが、もしこれがぶっとい幹が中心の線形で進むストーリーだと、星々のように個が調和する今作のメッセージはかき消されてしまうだろう。難しい判断ではあるが、テーマを生かす演出になっていることは付言しておきたい。
涼にとって、病気は二度目の挫折を意味する。中心選手であり、憧れと尊敬のまなざしを向けられる“一番星”の涼の軌道は相関図に波及する。涼が自分自身を超えて行くとき、そこに伍鉄が言うところの「ホワイトホール」が生まれる。
それぞれの軌道を回っているようでありながら、私たちは互いを意識している。単なるトラブル解決やスポ根のカタルシスではない、ぶつかり合いとすれ違いを通して、相互のかかわりを描く人間ドラマが『GIFT』である。「2人なら選択肢は2倍。みんななら?」。ラストシーンで名作映画『最強のふたり』へのオマージュがあった今作は、ドラマの楽しみ方を拡張する作品といえるだろう。
■放送情報
日曜劇場『GIFT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堤真一、山田裕貴、有村架純、本田響矢、細田善彦、細田佳央太、円井わん、越山敬達、八村倫太郎、やす(ずん)、水間ロン、冨手麻妙、ノボせもんなべ、杢代和人、宮﨑優、生越千晴、町田悠宇、澤井一希、中山脩悟、田口浩正、西尾まり、真飛聖、麻生祐未、菅原大吉、吉瀬美智子、玉森裕太、安田顕、山口智子
脚本:金沢知樹
企画・演出:平野俊一
演出:加藤尚樹、伊藤弘晃
プロデューサー:宮﨑真佐子、内川祐紀
協力プロデューサー:中澤美波
監修・協力:一般社団法人日本車いすラグビー連盟
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/GIFT_tbs/
公式X(旧Twitter):@gift_tbs
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