『マテリアリスト』“シニカルな婚活描写”が残酷 純粋な恋を諦めた大人たちの三角関係

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、他人の結婚式にばかり出席しがちな徳田が『マテリアリスト 結婚の条件』(以下、『マテリアリスト』)をプッシュします。

『マテリアリスト 結婚の条件』

 本作は、『パスト ライブス/再会』のセリーヌ・ソンが監督を務めた、現代の婚活市場と男女の三角関係を描くラブストーリー。結婚相談所で働くルーシー(ダコタ・ジョンソン)は、“凄腕マッチメーカー”としてクライアントの相談に真摯に応え、ときに人の「市場価値」を冷静に数字で分析する「マテリアリスト(=物質主義者)」として振る舞う。

 冒頭ではそのルーシーがおしゃれな楽曲とともにニューヨークの街並みを颯爽と歩いていく。なんだか直前に観たアン・ハサウェイが出ている別の映画(=『プラダを着た悪魔2』)を思い出すなとか思っていたら、ルーシーが通りすがりの男に「あなた独身?」と突然話しかけるので笑ってしまった。

 “凄腕マッチメーカー”は見知らぬ人にも「ここだ」と思ったときには営業を欠かさない。

 ニューヨークでバリバリ働くキャリアウーマンという点では『プラダを着た悪魔』っぽい設定を思わせるが、画面の作りはだいぶ異なる。『プラダを着た悪魔』のミランダ(メリル・ストリープ)が基本忙しなく移動し続けているのに対して、『マテリアリスト』の画面は色合い的にも画角的にもかなりおとなしい。じわりと動くトラッキングや長尺でシンメトリーな構図がやたらと出てくるので、視聴体験としてはだいぶ違ったものになるだろうなというのが印象だ。

 実際、鬱屈とまではいわないまでもかなり内省的な展開が続いていく。大雑把に要約すれば、仕事も恋も微妙にうまくいかないダコタ・ジョンソンを中途半端な距離のカメラが淡々と追い続けているような映画だ。『プラダを着た悪魔』のような派手な達成とでもいうようなものはないのだが、その分微細な感情の動きと、登場人物が(痴話喧嘩で)極端に激昂した際の画面の揺れが生むコントラストを、じっくりと楽しむことができる。

 主要人物は3人。ルーシーの他に彼女を取り巻くイケメンが2人登場して、その三角関係を軸に進行していく。1人はクリス・エヴァンス演じるジョン。ルーシーの元カレで、たまたま結婚式の場で再会してから連絡を取り合うようになる。30代の恋愛としてはおいしい設定だ。

 もう1人はハリー (ペドロ・パスカル)という超絶金持ちのイケオジで、結婚相談所のスタッフからは“ユニコーン”と呼ばれる優良物件。マテリアリストであるルーシーは、ハリーに言い寄られて関係を持ってしまう。わざわざジョンと再会したあとにハリーとくっつくので、こちらとしてはそれなりの修羅場を期待するのだが、おとなしい映画なのであまりそういうことにはならない。

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