『田鎖ブラザーズ』“復讐の闇”につけ込む秦野に驚愕 “最後の言葉”は何を意味する?
「まるで見てきたみたいですね」
相談者の“心の根っこ”を聞くと言う福祉健康課の職員・秦野小夜子(渡辺真起子)に、稔(染谷将太)はそう突っぱねる。これまで「真実にしか興味がない」と言い続けてきた稔だからこそ、秦野の“妖術”を跳ね返せたのだろう。
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)第7話のキーワードは「敵or味方」だ。被害者の誰もが抱く、加害者への復讐心という闇。しかし、多くの被害者はその闇に飲み込まれてはならないと必死にフタをしている。それが法治国家で生きるということだから。どんなに恨んでも恨みきれない相手を、法で裁くことこそが正しい。そうして踏ん張って閉ざしたはずだった被害者たちの心のフタを、秦野は味方のふりをしてこじ開け、殺人へと駆り立てていた。それが彼女の「仕事」なのだと言って。
そのつけ入りかたは実に巧妙で、まるで“自分のことを全てわかってくれている人”という錯覚さえもたらす。その痛みを、その苦しみを、まるで間近で見てきたかのように言葉を紡ぎ出す。それは、次第にひとつの物語となって被害者をコントロールしていく。
人はストーリーを信じ込むと、世界がそうとしか思えなくなる。青委警察署の捜査会議で「容疑者だと思い込まないように」と注意されていたのもそう。その対象に向けた思いが強くなるほど、頭のなかで組み立てられたストーリーは真実味を帯び、次第に他の選択肢を自ら放棄していることにも気づけなくなる。
秦野と接触した直後の真(岡田将生)がまさにそうだった。いつも人より優れた洞察力で、細かな違和感も見逃さない真。だが、そんな彼がビルから転落死した宇野(山本浩司)を、「どう見ても自殺だろ」と言い切ってしまう。秦野に背中を押されて、復讐を果たした宇野。その目的を達成した今、生きる意味などなくなったのだろう、と。それこそ、まるで見てきたかのように想像が膨らんだのではないだろうか。その筋書きは、もしかしたら真自身が辿ろうとした一つの物語だったのかもしれない。
しかし、真が思い描くストーリーに「違う」と目を覚まさせたのが稔だった。自分のなかで組み立てた物語に飲み込まれることは、誰にもある。きっと稔にも同様の時期があったはずだ。両親が殺害された直後、誰もが「敵に見えた」と稔は言う。幼かった稔にとって、それはあまりにも苦しい経験だったに違いない。そんな稔が唯一、笑顔を向けられたのが「もっちゃん」こと茂木(山中崇)だった。それこそ、本当に間近で「見てきた」人だから、信じられる。茂木は「味方」。でも、秦野小夜子は「見てきたように」振る舞う「味方の振りをした敵」だ、と。