“朝ドラのクズキャラ”は憎めない? 『風、薫る』藤原季節、『ばけばけ』岡部たかしなど
『カムカムエヴリバディ』大月錠一郎
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)で、2代目ヒロイン・るい(深津絵里)の夫となる大月錠一郎を演じるオダギリジョーも憎めない男の代表格だ。数々の映像作品で弱さや情けなさを漂わせる背中に放っておけない愛おしさを滲ませてきたが、本作の錠一郎もまた、初登場時から素性のわからない謎の人物としてるいを翻弄する。上京してすぐに原因不明の病気によってトランペットが吹けなくなった錠一郎は、デビューの夢が潰えて大阪に帰ってきた直後、るいに向かって「お前とは終わりや」と冷たく突き放す。トランペッターとしての夢を絶たれて自暴自棄になったとはいえ、態度を急変させて、るいと接する姿には胸が痛んだ。その後、錠一郎はるいと結婚して京都のあかね通り商店街へと移住。回転焼き屋を始めたるいの仕事を手伝おうにも、世間知らずで不器用な錠一郎はトランペットの演奏以外はてんでダメだった。結局、家の収入はるいに任せきりになってしまうが、子どもたちの良き父親として、穏やかな人柄で家庭を明るく和ませる姿を観ていると、不思議と彼のことが愛おしくなってしまう。これぞオダギリジョーという俳優のなせる業だろう。
『ちむどんどん』賢秀
『ちむどんどん』(2022年度前期)でことあるごとにトラブルを起こしてきた比嘉家の長男・賢秀(竜星涼)も、視聴者からは「最低だ」と非難されることが多かったキャラクターだ。やんちゃなお調子者で、高校を中退したあとは定職に就くこともなく、警察の世話になるのは日常茶飯事。妹・暢子(黒島結菜)の就職活動にも大きな影響を与えるなど、家族に降りかかる災難の大部分には賢秀の起こしたトラブルが関わっている。若気の至りであればよかったのだが、その後も賢秀は儲け話につられて大金を騙し取られたり、暢子が貯めていた所持金を持ち逃げしたりと、呆れた行動を繰り返す。正直、憎めないかといわれれば、まったくそんなことはないが、家族で唯一の男手として母親や妹たちの生活を少しでも助けたいという気持ちは本物。一生懸命さが空回りして最悪の結果をもたらしてしまう悲哀もあって、最終的には「あいつなら失敗しても仕方ない」と思わされてしまった。
これまでも数々の憎めない“ダメ男”や“クズキャラ”が登場してきた朝ドラだが、果たして寛太は今後、どのような人物として描かれていくだろうか。久しぶりに再会した直美との関係性の変化にも注目したい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK