『月夜行路』波瑠が夏目漱石作品から導いた真相 『銀河鉄道の夜』と重なる少年たちのSOS
龍之介の部屋で、ルナは彼と親友だった光二(田野井健)の関係に目を向ける。かつて仲の良かった2人は、今では距離を置いている。ルナはその関係を、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』のジョバンニとカンパネルラに重ねる。親友でありながら、うまく言葉にできない思いを抱えた2人。その例えによって、龍之介の行動は単なる奇行ではなく、誰かを守るための必死のサインとして見えてくる。
真相は、龍之介が光二を守ろうとしていたというものだった。進学校に通う光二は勉強についていけず、追い詰められていた。その苦しさから、ショッピングセンターで手に入れた針を、ぬいぐるみや肉、ロールパンの中に仕込んでいたのだ。偶然それを見てしまった龍之介は、誰かが傷つく前に止めようと、光二の後を追い、針の入ったものを回収していた。爆破予告も同じだ。光二が夜の公園で砂場にガラス片をまいているのを見た龍之介は、人が近づかないようにするために騒ぎを起こした。龍之介の行動は、光二の罪をかばうためというより、これ以上誰かを傷つけさせないための必死の手段だった。
龍之介と光二の間には、ずっと消えないわだかまりがあった。一緒に始めたダンスを、光二が途中で辞めてしまったこと。ダンスに夢を持ち始めていた龍之介にとって、それは簡単には受け止められない出来事だったのだろう。けれど、距離ができても、龍之介は光二を放っておけなかった。ルナの「過去の自分は否定しないでほしい」という言葉は、そんな2人の関係にも重なっていた。事件を解いた先に見えてきたのは、罪の真相だけではない。夢を諦めたこと、友達とすれ違ったこと、それでも一緒に過ごした時間まで否定しなくていいという、切実な思いだった。
一方、沢辻家でも変化があった。大学を辞めたいと言っていた芳香(戸田彩巴)は、本当は声優の学校に通いたいのだと打ち明ける。「自分の声で誰かを楽しませることができたら」という言葉からは、ただ大学から逃げたいのではなく、自分なりに進みたい道を見つけようとしていることが伝わってきた。涼子たちも、その思いを頭ごなしに否定せず、娘の本音を受け止めようとする。第1話では会話も少なく、バラバラに見えた沢辻家だが、少しずつ互いの言葉に耳を傾けられるようになっているのが嬉しい。
ただし、肝心のパスワードは今回も解けなかった。『吾輩は猫である』の初版本をめぐる謎は残されたまま、ルナは次に修善寺温泉へ向かうことになる。そして、ダブルス解消以来わだかまりを抱えていた涼子とさつきの関係も、再び動き出しそうだ。
■放送情報
水曜ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:波瑠、麻生久美子、作間龍斗、久本雅美、栁俊太郎、渋川清彦ほか
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)、『月夜行路 Returns』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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