『素晴らしき新世界』にハマる人なぜ続出? 異色のタイムスリップが覆すジャンルの定石

 たとえば、撮影現場で、ソリが周囲のエキストラたちに「無礼な口を利くな!」と吠えた場面。この姿は「嬪ミーム」として切り取られ、作中、SNSで爆発的に拡散される。その勢いは画面越しにも伝わり、視聴者の耳にも妙な中毒性を残しているほどだ。現代の常識を無視して朝鮮時代の言葉でまくしたてるソリの姿は、豪快でありながらもどこかユーモラスで愛らしい。イム・ジヨンがこれまで培ってきた人を惹きつける存在感が、本作では周囲を振り回していくコメディの勢いへと直結しており、物語に強烈な推進力を与えている。

 そして、そんな規格外のソリの魅力を、さらに際立たせているのがホ・ナムジュンの存在だ。現代へタイムスリップしたばかりで混乱し、車道へ飛び出したソリと、彼女を自分を狙った当たり屋だと決めつけるセゲ。この最悪の衝突から幕を開ける2人の関係に、本作ならではの愛おしさがある。

『素晴らしき新世界』(SBS公式サイトより)

 近作『その電話が鳴るとき』や『100番の思い出』などで、重厚かつミステリアスな役どころを好演してきたホ・ナムジュンだが、どこか悪役めいた鋭い眼差しと近寄りがたい雰囲気は、本作でも健在だ。だが今回は、その“怖そうな男”がソリに振り回されていくギャップがたまらない。ソリに怒鳴られればたじろぎ、預かった犬も、後々彼女に怒られるのが怖くて捨てられない。周囲から「冷酷」と恐れられる財閥社長でありながら、ソリのペースに巻き込まれていく姿が、彼の新たな愛らしさを引き出している。

 これまで築き上げてきたイメージを巧みに活かすイム・ジヨンと、そのペースに翻弄されながら新たな表情を見せるホ・ナムジュン。2人の掛け合いが、ファンタジーロマンスとしての魅力をより鮮やかなものにしている。

 その一方で、物語は単なるドタバタ劇では終わらない。現代で出会う人物たちとの関係が深まるにつれ、姜禧嬪が死へ追い込まれた過去の真相が少しずつ浮かび上がっていく。朝鮮時代で「悪女」として処刑された彼女の死は、運命だったのか。それとも、仕組まれた陰謀だったのか。コミカルな空気の裏側で、物語は静かにサスペンスの色を帯びていく。

『素晴らしき新世界』(SBS公式サイトより)

 それでも、本作の視線は、過去ではなく未来へと向いている。運命に翻弄されながらも、自分自身の手で新たな人生を切り開こうとする。その力強さが、本作に単なるタイムスリップ劇以上の熱量を与えている。

 張り巡らされた運命の糸を、ソリとセゲの愛おしいコンビネーションが爽快に突破していく。かつて「罰」として与えられた死を蹴り飛ばし、新しい人生という「褒美」を掴み取ろうとするヒロインの、力強い開拓史。その強気な台詞の先に待つ、この素晴らしき新世界の顛末を、私たちはただただ胸を高鳴らせて見届けていきたい。 

■配信情報
『素晴らしき新世界』
Netflixにて配信中
出演:イム・ジヨン、ホ・ナムジュン、チャン・スンジョ
制作: ハン・テソプ、キム・ヒョヌ、カン・ヒョンジュ

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