『GIFT』が描くぶつかり合うことの尊さ “元妻”山口智子が父子の関係に一石を投じる

 5月17日放送の『GIFT』(TBS系)第6話では、宇宙物理学者の伍鉄(堤真一)が数式に足りないものを見つけるために試行錯誤する。

 メモリアルカップの惜敗を経て、車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」は生まれ変わった。それから半年がたち、新たにサポートスタッフとして加わった昊(玉森裕太)だったが、伍鉄に息子であると言い出せずにいた。一方の伍鉄は悩んでいた。ブルズの敗北は、自身が考えた方程式に欠けているものがあることを意味していた。

 自問自答する伍鉄は、答えをコートの中に見いだそうとする。ラグ車に乗って選手目線で見つめる中で、それが「予測できないゆらぎ」であることは感じたが、背中を押したのは昊だった。昊の提案でブレイズブルズは合宿をすることに。練習できる場所は限られるため、ライバル「シャークヘッド」と合同合宿を行うことになった。出発当日、気乗りせず、合宿に行くか迷う伍鉄の前に涼(山田裕貴)が現れる。

 第6話では親子の“再会”が描かれた。といっても、かなりイレギュラーな形である。ブルズの選手とスタッフがいる席に広江(山口智子)が入ってきて、伍鉄と再会を果たす。その場で伍鉄の元妻であると明かし、昊の母親であると告げた。ここから、昊が伍鉄の息子であるという結論が導かれる。

 通常よくあるのは、悩んでいた伍鉄が昊の助言をきっかけにスランプを脱し、喜びを分かち合う中で、昊が伍鉄に告白するという流れだろう。ドラマでは、広江が偶然を装って無理やり暴露する。まさに「偶然という名の奇跡」ではなく「必然という名の作為」だ。伍鉄と昊の性格を知る広江としては、どちらからも言い出せないまま、親子の関係が進展しないことに危機感を抱いたに違いない。

 元妻の乱入によってすっかり歯車が狂ってしまった伍鉄。合宿でもウジウジと考えてばかりで、それを見た涼が一緒に競技をやろうと声をかける。「目に見えない何かってたぶん心で感じるものだと思うんですよ」と『星の王子さま』のような台詞で伍鉄の心を動かした。

 涼にとって今回の合宿は、互いを知り、チームの一体感を高める狙いがあった。車いすラグビーでは、選手は障がいの程度に応じて持ち点が与えられており、コート上の選手の持ち点は合計8.0以下と決まっている。ハイポインターの選手だけではなく、障がいの重いローポインターの選手にも出場機会を確保する仕組みだ。

 ハイポインターやミドルポインターの選手がギリギリのパスを投げても、ローポインターの選手は取ることができない。キャサリン(円井わん)は「誰にでも取れるパス投げちゃダメだよ」と拓也(越山敬達)に注意する。皆が同じようにできるわけではない。互いに配慮しなければ成立しないスポーツであることを物語っていた。

 「差異を尊重する」と口で言うのはたやすい。けれども、実際に競技の中で差異を尊重することは簡単ではない。それ以前に、相手のことを知らなければ差異を尊重することもできない。涼が言う「互いを知ること」は、車いすラグビーに取り組んでいく上で避けて通れないことだったのだ。

 そんな涼が、息子に歩み寄ることができない伍鉄を見て嘆息したのも無理はない。伍鉄が「他人と生きられない生き方」であることを涼は承知している。涼だって、誰とも分かち合えない孤独を経験してきた。その上で「心を見てあげなきゃ」と助言したのは、愛し方を知らない父親である伍鉄への精いっぱいのエールでもあったはず。

 不器用な、いまどき珍しいゴツゴツとしたコミュニケーションが第6話では描かれていて、それは広江の強引さや言いにくいことを直言するチームメイト、目を見てありがとうと言う涼の姿に表れていたが、筆者は最近読んだベストセラーを思い出した。

 人間関係でうまくいかないとき、人は得てして自分の周りに箱を築いて、そこに入ってしまいがちだ。箱は凝り固まった先入観だったり、都合の良い真実なのだが、自分に嘘をついて自分自身を正当化することで、いつしか他人を色眼鏡で見るようになる。だから、箱から出て、同じ人間として相手と向き合うことが大事だ。

 『GIFT』を観ていて、自己開示と相互理解なくして車いすラグビーは成り立たないことがわかった。「わかり合うために、ぶつかっていこう」と涼は呼びかける。ぶつかることが先か、理解し合うことが先か。ひとつ言えることは、互いに対する信頼と敬意がないとぶつかり合うことはできないということ。少なくとも、その瞬間は自分の中の恐怖を克服しているのだから。

 「一人で答えを出そうとしていた」伍鉄は自分の外に答えを探していたのが、ブルズの仲間たちと接し、ぶつかり合う中で人格の変容を経験した。「皆さん」から「みんな」に変わり、そこには伍鉄自身も含まれている。ぶつかることを避けないこと。目をそらさないこと。なお、伍鉄が昊と行った銭湯は台東区の有馬湯である。

参考
アービンジャーインスティチュート『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房)

■放送情報
日曜劇場『GIFT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堤真一、山田裕貴、有村架純、本田響矢、細田善彦、細田佳央太、円井わん、越山敬達、八村倫太郎、やす(ずん)、水間ロン、冨手麻妙、ノボせもんなべ、杢代和人、宮﨑優、生越千晴、町田悠宇、澤井一希、中山脩悟、田口浩正、西尾まり、真飛聖、麻生祐未、菅原大吉、吉瀬美智子、玉森裕太、安田顕、山口智子
脚本:金沢知樹
企画・演出:平野俊一
演出:加藤尚樹、伊藤弘晃
プロデューサー:宮﨑真佐子、内川祐紀
協力プロデューサー:中澤美波
監修・協力:一般社団法人日本車いすラグビー連盟
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/GIFT_tbs/
公式X(旧Twitter):@gift_tbs
公式Instagram:gift_tbs
公式TikTok:@gift_tbs

関連記事