『風、薫る』野添義弘&若林時英ら新キャラ登場 看護の概念が根付くまでの“壁”
りん(見上愛)と直美(上坂樹里)は梅岡看護婦養成所での座学を終え、次なるステップへ。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第7週が幕を開け、いよいよ帝都医科大学附属病院での実習がスタートした。第31話では、看護婦見習いとなった生徒たちが、どんよりとした空気が流れる医療現場に早くも新たな風を吹かせた。
ナイチンゲールから直接指導を受けたバーンズ(エマ・ハワード)から、看護の基本を叩き込まれた生徒たち。だが問題は、その「看護」の概念が日本にまだ根付いていないことだ。ゆえに当然のことながら、看護婦の存在意義をまだ誰も理解していないのである。
病院に到着した生徒たち、改め「見習生」たちは、バーンズに付き添われて帝都医大病院の院長・多田(筒井道隆)のもとへ挨拶に伺う。口では「諸君を迎えることができたのは大変喜ばしいこと」と話す多田だが、その怪訝な表情から、すぐさま歓迎ムードではないことが見てとれた。その後、見習生たちはフユ(猫背椿)、ツヤ(東野絢香)ら看病婦から仕事を教わることになるが、彼女たちの反応もまた同じだった。
ついに患者がいる病室へと足を踏み入れた見習生たちは唖然とする。そこには、バーンズから教わったこととは真逆の光景が広がっていたからだ。
窓はすべて締め切られており、換気は一切されていない。そのため、看病婦が作業するたびにホコリが舞い、患者たちは咳き込む。シーツはしわくちゃどころか、入院してから一度も交換されていなかった。ありていに言えば劣悪な環境であり、これでは治るものも治らない。
看病婦たちはその状況に疑問を持つ以前に、どこか患者を疎ましがっている印象すら受ける。だが、彼女たちが置かれた状況を考えれば、仕方がないことなのかもしれない。
そもそも看病婦とは、トレインドナース以前から病院に勤めている、専門的な訓練を受けていない従来の看護婦のこと。看護の知識が何もない中で、彼女たちは手探りで患者と向き合っているのだ。りんたちが初めはそうだったように、シーツ交換や掃除が重要とは思わないのも当然である。
ましてや、怪我人や病人の世話をする人間が下男/下女として扱われていた時代。看病婦たちもこれまで、嫌というほどに差別や偏見の目に晒されてきたのではないだろうか。同じ病院の仲間であるはずの副院長・渡辺(森田甘路)ですらも彼女たちを見下し、本来の仕事ではない雑用を押し付けている。そんな中では、自分たちの存在意義を感じられず、心が荒んでいくのも自然の流れだ。
しかし、現状に文句を言っているだけでは何も変わらない。バーンズに「今日一日あなたたちを見ていましたが、あれがあなたたちにできる精一杯の看護ですか?」と喝を入れられた見習生たちは、“看護日誌”と称して、それぞれに割り振られた担当患者の体調や様子を記録していく。今でいう“カルテ”に近いものだろう。それがあれば、誰かが休みの時や担当が変わった場合も、スムーズに患者の面倒を見ることができる。
だが、足の肉腫を手術した園部(野添義弘)を担当することになったりんは、何を書いていいか分からなかった。園部はりんに何も話そうとせず、コミュニケーションが取れないのである。ここで思い出すのが、かつて苦労して訳したナイチンゲールの言葉だ。
「看護婦のまさに基本は患者が何を感じているかを、患者につらい思いをさせて言わせることなく、患者の表情に表れるあらゆる変化から読み取ることができることなのである」
高熱で倒れた多江(生田絵梨花)の看病を通して、「observe(観察)」の大切さを知ったはずのりんだが、ついつい園部から言葉を引き出そうとしてしまう。どの職業でも最初は、知識がなかなか実践に結びつかず苦労するものだ。
一方で、直美は苔癬を患う丸山(若林時英)が望むことを自然とできている。過酷な生い立ちゆえに誰にも期待せず生きてきた彼女のドライなところが、案外看護婦向きなのかもしれない。
いずれにせよ、実習は“知行合一”のための場であり、彼女たちは実践を通して看護婦としての確かな力をここで身につけていく。同時に、彼女たちは世間に看護婦の存在意義を示すという重大な責務を担っている。彼女たちの働き次第で、来年以降の看護実習の存続と、看護婦の行く末が決まると言っても過言ではない。いつだって、“ファーストペンギン”が背負う重圧は大きいのだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK