母の故郷を訪れた少年の“大人への第一歩” リトアニア映画『MOTHERLAND』7月4日公開へ
リトアニア映画『Gimtine(原題)』が、『MOTHERLAND』の邦題で7月4日にシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開されることが決定した。
本作は、ソビエト連邦崩壊後、独立間もないリトアニアを舞台にリトアニア生まれの母とアメリカ生まれの息子がその地を訪れる物語。監督は、ワシントンD.C.でリトアニア移民の息子として育ったトーマス・ヴェングリスが務めた。テレンス・マリックやケリー・ライカートら名だたる監督のもとで編集助手として経験を重ね、本作が初長編劇映画となる。
1992年、ソ連からの独立を果たして間もないリトアニア。アメリカから母ヴィクトリアと息子コヴァスがこの地を訪れた。ヴィクトリアは幼い頃、ソ連占領下のリトアニアで家族と引き離され、家と土地を失った過去を持つ。この国ではナチス・ドイツからソ連へと支配が移り変わり、人々は異なる体制のもとに置かれ、リトアニアの自由は揺らぎ続けてきた。そうした連なりを経て、ヴィクトリアは20年ぶりに故郷へと戻る。失われた実家の土地を取り戻し、過去を呼び起こすように、息子とともに新たな暮らしを始めようとしていた。しかし、懐かしの家にはすでにロシア人一家の生活があった。簡単には土地を取り戻せない現実を目の当たりにし、理想としていたリトアニアでの再出発は、静かに歪み始めていく。
少年コヴァスを演じたのは、アメリカ生まれでありながら、家族のルーツであるリトアニアを身近に感じて育ったという、撮影時、役と同じ年齢だったマータス・メトレフスキ。母ヴィクトリア役は、リトアニアを代表する俳優セヴェリヤ・ヤヌシャウスカイテが演じ、本作でリトアニア国立映画祭最優秀主演女優賞を受賞した。
あわせて公開されたキービジュアルは、静かな海の風景と遠くを見つめる少年のまなざしが重なるデザイン。海に向き合って佇む後ろ姿は母親であり、その存在がふたりのあいだにある距離を静かに浮かび上がらせている。
日本公開に向けて、ヴェングリス監督からコメントも到着。ヴェングリス監督は「この夏、日本の観客の皆様に本作をお届けできることが本当に嬉しく、胸を躍らせています。1990年代初頭のバルト三国における激動の時代の一端を、皆様に感じていただければ幸いです」と語っている。
また、公開を記念して、リトアニアの食品や雑貨を輸入し、販売しているSvente(スヴェンテ)とのタイアップも決定した。
トーマス・ヴェングリス監督 コメント
『Motherland』は、母の故郷であるリトアニアを訪れた少年が、不安を抱えながら大人への第一歩を踏み出す姿を描いた、私にとって非常に大切な作品です。当時のリトアニアという国もまた、ソ連崩壊後の独立という新たな第一歩を、不安とともに踏み出そうとしている最中でした。
映画は特定の時代と場所を舞台にしていますが、家族、過去、そしてアイデンティティという根底にある問いが、バルト海沿岸を訪れたことのない人々にも、普遍的な共感をもって受け止められるものだと信じています。
また、祖父母の村や幼少期の故郷を訪れた時に私たちが感じるのと同じ感情を描いています。かつての自分と比べて、「今の自分は誰なのか」と自問するその感覚、リトアニアのことわざにあるように、「同じ川に二度足を踏み入れることはできない」という感覚を味わうために、わざわざ国を離れる必要はありません。私はリトアニア系移民の多くの子供たちと同じように、どこか亡命者として生まれたような気がしていました。
子供の頃、両親の故郷は、限りなく美しい神話的な土地だと聞かされて育ち、リトアニアのルーツによって自分自身を定義していました。しかし、ソビエト連邦崩壊後、初めて大西洋を渡った時、そのイメージとは異なる現実に直面しました。そこは、複雑な問題を抱えた小さな国があり、見知らぬ人々の怒りの表情、荒廃した建物、そして新たな現実の中で必死に生きようとする人々。それは不思議でありながら、どこか心に馴染む感覚でもありました。
この夏、日本の観客の皆様に本作をお届けできることが本当に嬉しく、胸を躍らせています。1990年代初頭のバルト三国における激動の時代の一端を、皆様に感じていただければ幸いです。例えば、初めてのキスや、この見知らぬ土地で自分を支えてくれる温かい友情を夢見る、大人になることを待ちわびる内気で情熱的な少年。あるいは、郷愁に駆られ、理想化された過去にこそ救いがあると信じ、かつての恋人や家族の遺産にすがりながら、揺れ動く世界の中で生きようとする母親。登場人物たちにご自身の姿を重ねていただければと思います。
そして、これは、私自身が実際に生きた時代を描いた映画です。観客の皆様がスクリーンを通して、私の経験を共有すると同時に、登場人物の視点に深く入り込み、初恋、初めての裏切り、そして親もまた欠点を抱えた複雑な人間であると気づきといった、初めての経験の痛烈な新鮮さ、あの純粋無垢な青春時代を思い出してほしいのです。私たちの国は遠く離れていますが、この映画が 1990 年代のリトアニアの世界へ観客を深く引き込むだけでなく、日本の観客の皆様と心を通わせ、心の奥底にある感情は皆同じだということを改めて感じていただけることを願っています。
■公開情報
『Motherland』
7月4日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
出演:マータス・メトレフスキ、セヴィリヤ・ヤノシャウスカイテ、ダーリウス・グマウスカス、バルボラ・バレイキテ
監督・脚本:トーマス・ヴェングリス
配給:太秦
後援:駐日リトアニア共和国大使館
2019年/リトアニア、ラトビア、ドイツ、ギリシャ/96分/シネマスコープ/5.1ch/原題:Gimtine/日本語字幕:川喜多綾子
©2019 Studio Uljana Kim / Locomotive Productions
公式サイト:motherland-gimtine.com
公式X(旧Twitter):@MOTHERLAND0704
公式Instagram:@motherland_gimtine