出口夏希、なぜ脇役でも目を奪う? 『サバ缶、宇宙へ行く』で証明した“主役の器”

 出口が演じるこの奈未という人物は、たしかにクラスの中心人物だ。しかしこれは、ただの作品上の設定でしかない。リーダー然とした言動を取ることが彼女に許されたとしても、それはムードを生み出すことにはつながらない。“出口夏希=菅原奈未=クラスのリーダー”という情報を視聴者に与えるのにとどまるだろう。「ムード」というのは、その場に漂う雰囲気や空気のこと。特定のキャラクターの言動だけでつくり出せるものではない。

 クラスのセンターというポジションを与えられた奈未の声、視線、仕草の一つひとつが、ムードの起点になる。もちろんこれは、奈未に扮する出口の演技表現があってこそ実現するもの。彼女が発するセリフの音の感触や、誰かに向けるまなざしの温かさが、これを受け取るほかの生徒役の演者と化学反応を起こす。そしてこの“反応”に触れた出口が、さらにアクションを重ねる。これがクラス全体のムードになっているのではないか。本作は学園モノだから、クラスのムードは作品そのもののムードとニアリーイコールである。

 本作において出口は主演ではないが、このポジションを担うことができるのは、“主役の器”の持ち主だと断言できる。こうした存在は、若手俳優には多くないと冒頭で述べた。しかし現実には、小規模な映画や深夜帯のドラマなど、若手俳優の主演作が量産されている。もちろん、これに対して異を唱えようなどとは思っていない。この中にも本当の“主役の器”の持ち主は存在するし、経験値を重ねる過程でそうなっていく者もいる。ただ、若くして作品のムードに影響を与えられる俳優というのは、かなりかぎられているだろう。出口はそんな数少ない俳優のひとりなのである(ちなみに、寺尾創亮を演じる黒崎煌代もそうだ)。

 この『サバ缶』の主演は、北村匠海である。子役期からキャリアをスタートさせた彼は、20歳頃からずっと、とりわけ映画作品の中心に立ち続けてきた。そんな北村との共演によって生まれる深い関係は、俳優・出口夏希の持つ“主役の器”を、さらに磨くことにつながっていくのではないだろうか。

■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy『イデアが溢れて眠れない』(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
公式X(旧Twitter):https://x.com/sabauchu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv

関連記事