『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』と『黒鉄の魚影』の共通点 原作愛&アクションの魅力

 劇場版『名探偵コナン』シリーズ第29弾の『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』(以下、『ハイウェイの堕天使』)が4月10日に公開。神奈川県警で白バイを駆る萩原千速をメインキャラにした初の劇場版は、こちらも初の劇場版監督を務める蓮井隆弘の原作愛と持ち前のアクション描写、そして評価の高い心情描写が合わさって、最初から最後まで目を離させない作品になっている。

 青山剛昌の漫画やそれを原作としたアニメ『名探偵コナン』のシリーズで主役はもちろん「江戸川コナン」だが、年に1度のお祭りのような劇場版では、コナンがやや脇に回るようなことも起こる。最近では2024年の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が、怪盗キッドと服部平次が登場して遠山和葉と大岡紅葉が絡み『YAIBA』のキャラまで顔を出す、オールスター風味があった。

劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』本予告【4月10日(金)公開!】

 『ハイウェイの堕天使』も、予告編のときから強い存在感を持つ千速がフィーチャーされていて、千速の弟の萩原研二とその同僚の松田陣平というシリーズでも古参のキャラが絡んできそうな雰囲気もあって、そちらをメインとしたドラマが繰り広げられるのかもしれないと思わせた。研二と陣平に2025年の『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』に絡んだ諸伏景光、そして伊達航にレギュラーキャラの安室透こと降谷零も入れた「警察学校組」に踏み込んだドラマが描かれるのかもといった想像も浮かんだ。

 そして公開となった『ハイウェイの堕天使』は、千速の活躍に千速とは同じ神奈川県警に勤務する横溝重悟警部とのいろいろな関係が描かれつつ、重要な場面では主役のコナンがその才知であり技術を目一杯に繰り出して大活躍する映画になっていた。

『黒鉄の魚影』との関係

 パンフレットのインタビューで蓮井監督は、「シナリオの打ち合わせの段階で、『萩原千速をメインに』と決まったとき、まず考えたのは『江戸川コナンがちゃんと主役に見えること』。どんなに千速が活躍しても、この作品は『名探偵コナン』ですから」と答えている。『名探偵コナン シネマガジン2026』(小学館)に掲載のインタビューでは、「小さくなった主人公のコナン君が、大人顔負けの活躍をする」爽快さがシリーズの魅力と語っていた蓮井監督だけに、コナンのすごさをしっかり見せる映画にしたかったのだろう。

 『シネマガジン2026』では、原作の青山剛昌もインタビューに答える。蓮井監督については、「『YAIBA』の監督もやってくれたんですよね。アクションに長けた監督なので、かなりテンポも良くて、やりやすいです」と言って、今回の映画で目玉となるバイクアクションなどを任せたことを打ち明けている。

 実際、映画に登場するバイクアクションは、冒頭から千速が謎の黒いバイクを追跡するシーンに始まって、女子高生探偵の世良真純がコナンを後席に乗せて黒いバイクから逃げようとするシーン、そしてクライマックスへと至る大混乱に陥った路上での千速のすさまじいラインディングに至るまで、瞬きすら許されない見どころに溢れたものになっている。

 こうしたアクションに関する蓮井監督の手腕は、演出の1人として参加した2023年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』が、格闘からカーチェイスから海中での逃走劇に巨大な海洋施設からの脱出劇まで多彩なアクションに彩られ、映画ならではのスペクタクルな味わいを観る人に感じさせたことからも伺える。その『黒鉄の魚影』の打ち上げで、プロデューサーから監督として声がかかったという蓮井監督だけに、『ハイウェイの堕天使』でもそこかしこにアクションを散りばめた。

 それはバイクによるチェイスだけでなく、世良が得意とする截拳道(ジークンドー)を使っての格闘であり、毛利蘭のここぞというときの空手技であり、クライマックスに警視庁から出張ってきていた宮本由美と三池苗子によるミニパトでのカーアクションといったもの。そして何より千速とコナンによるシリーズでもかつてないほどの無謀でド派手な展開が、『黒鉄の魚影』とはまた違った興奮を観客にもたらす。観終わっていっしょにアクションをした気になって、ちょっとした疲労感を覚えている人も結構いそうだ。

 もっとも、アクションだけでは本当に疲れ切ってしまうところを、『ハイウェイの堕天使』では登場するキャラクターたちの関係を描き、通う心情を感じさせて昂ぶった心を落ち着かせ、ドラマとして没入させるところがある。一例が千速と弟の研二の関係だ。

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