松村北斗らによる裏話も 『秒速5センチメートル』6時間超え大ボリュームの特典映像を解説

 桜の花の落ちるスピードは、秒速5センチメートル。そんなセリフが映画に登場する。とてもゆっくりで、穏やかな速度だ。しかし、その小さな積み重ねが、いつの間にか取り返しのつかない距離を生んでいることがある。恋も、きっと同じなのだと思う。2025年に公開された実写映画『秒速5センチメートル』は、そんな時間の残酷さを描いた物語である。

 この映画の原作は、新海誠の不朽の名作にして“新海ワールドの原点”との呼び声も高い劇場アニメーション映画。1991年に東京の小学校で出会った貴樹(上田悠斗)と明里(白山乃愛)は、お互いの孤独にそっと手を差し伸べるように心を通わせていく。卒業と同時に明里が引っ越してからも、二人は文通を通してつながっていたはずだった。

「2009年3月26日、またここで会おう」

 中学1年生の冬、吹雪の夜に栃木県で再会を果たした二人は、雪のなかに立つ一本の桜の木の下で、最後の約束を交わす。そこから時が流れ、2008年になった世界線の貴樹と明里を、それぞれ松村北斗と高畑充希が演じた。30歳を前にして、自分の一部が遠い時間に取り残されたままだと気づくーー松村は、そんな貴樹の心の揺らぎを、静かなまなざしで体現していた。

 なぜ、貴樹と明里はすれ違ってしまったのか。よく、“女は上書き保存で、男は名前をつけて保存”などとたとえられることがあるが、この物語の場合はそんな単純な男女の違いでは片付けられないように思う。二人は、お互いを嫌いになったわけでも、裏切ろうとしたわけでもない。ただ、時間が流れて、少しずつ歩くスピードが変わってしまっただけなのだ。

 だからこそ、この物語はわたしたちの記憶のなかにある“別れの言葉のない別れ”を想起させる。

人生のステージが変わると、感想も変わる?

 そんな『秒速5センチメートル』のBlu-ray&DVDが、4月15日にリリースされる。アニメーション映画を観たときから、「視聴するタイミングによって、印象が変わる作品になる」と感じていたので、手元に置いて何度も観返せるのがうれしい。まだ恋を知らないころには、切ない恋の物語だな……と思った。しかし、貴樹や明里と同世代になった今観ると、時間の残酷さやどうしようもない人生のすれ違いが、ひどくリアルに思えた。

 貴樹と明里、どちらに感情移入するかによっても、物語の見え方は大きく変わる。かつては、「明里、最低!」と思っていたわたしも、年齢を重ねると彼女の気持ちに共感するようになってきた。遠く離れた誰かをずっと想い続けるというのは、決して簡単なことではない。日々は容赦なく流れていくし、人はそれぞれの場所で人生を歩んでいかなければならないからだ。

 現在は明里に感情移入しているわたしだが、数年後に観たら異なる感想を抱くかもしれない。人生のステージが変われば、共感する人物も変わっていくのだろう。大事な人ができたときに、「どんなふうに思った?」と感想を聞いてみるのも楽しい。

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