髙石あかりがヒロインな理由が詰まった『ばけばけ』第120話 心を揺さぶる牛尾憲輔の音楽も
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第24週「カイダン、カク、シマス。」では、ついにヘブン(トミー・バストウ)が新著を書き上げる。そのタイトルは、『怪談』(Kwaidan)。モデルである小泉八雲の代表作であり、怪奇短編集だ。
シチュエーションとしては第1話冒頭に帰着するが、ここまで第120話、実に半年近くを視聴者もまたトキ(髙石あかり)とヘブンと共に歩んできたからこその感動やカタルシスも込み上げてくる。だが、何より「スバラシ」いのは、怪談を話すトキ=髙石あかりの生き生きとした芝居と、演出面、とりわけ音楽の力だ。
頑なにベストセラーを書かなければと思っていたヘブンの視界を開かせたのは、トキの「私でも読める、読みたい本」という言葉。その答えは、かつて2人の距離を縮めるきっかけにもなった怪談だった。トキの考え、話す言葉に一目置いているヘブンにとって、怪談をテーマにした際のトキはきっと錦織(吉沢亮)にも勝るリテラリーアシスタントとなる。
長男の勘太(ウェンドランド浅田ジョージ)や次男の勲(柊エタニエル)も恐怖を感じるほど、怪談を披露するトキの話し口調はまるで何かが憑依したかのように、それでいて生き生きとしている。ヘブンもそれに飛び上がり、恐れおののきながらも、子供のような眼差しでトキの語りに夢中になっている。
3月13日の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に出演した髙石は、「怪談の朗読の仕方」について稽古での基礎もありつつ、一旦それを忘れて自分の感情を大事にしながら、「トキがどれだけ楽しいかっていうのを表現できればいいかなと思っていました」と答えていた。まさに楽しさが溢れ出す語り。
ここで登場する『耳なし芳一』をはじめ、『雪女』『むじな』は『ばけばけ 小泉八雲の怪談』(NHK総合)で佐野史郎、円井わん、濱正悟らが朗読をしているが、それと比べると当然ながら違いは歴然だ。トキは楽しさを爆発させながら、身振り手振りや表情をつけて物語に緩急をつけている。それは、何べん、何十ぺんと語っていくその先に、ヘブンの本が読めるという喜びが加わっていることも大きいだろう。
書斎で机に向かうヘブン。開け放った縁側に舞う桜の花びらはやがて雪へと変わっていき、板に貼られたアイデアメモも数えきれないほどに増えていく。気づけば四季が一巡りするほどに、2人の怪談執筆は幾晩も続いた――という様子がダイジェストで描かれていく。
一見するとおどろおどろしい怪談と妖怪、そして顔に般若心経を書いたヘブンなど、画面だけ見ればホラーだ。しかし、それをトキとヘブンの何気ない日常の日々として見せているのは、牛尾憲輔による音楽の力が大きい。ストリングスとピアノの温かな音色。恐怖と感動が込み上げてくる、こんな不思議な感情を抱いたのは『ばけばけ』が初めてだ。
ついに最後の作品『怪談』を書き上げたヘブンと、自分のことのように歓喜するトキ。そして2人を見守っていたブードゥードール。しかし、アメリカにいる編集担当のイライザ(シャーロット・ ケイト・ フォックス)は、そのタイトルを見て愕然とする。「まさか。なぜ最後にこんな幼稚な」とまで口にする。それは大衆が望む本ではなく、トキが読みたい本を書いてしまったからなのか。
次週はいよいよ最終週。週タイトルは「ウラメシ、ケド、スバラシ。」。脚本家のふじきみつ彦が最初期に考え、最も大切にしていた本作のキャッチコピー「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」という根幹のメッセージに辿り着く。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK