『呪術廻戦』“修羅の道”を進むと決めた伏黒恵の人物像 そこに滲む諦念と覚悟を見つめる

修羅の道へ進み、沈む覚悟

 己の保身のために他者を平然と騙し、利用する麗美のような人間は、伏黒の言う「救うべき善人」の枠組みから完全に外れている。本来なら救わないはずの彼女を見逃したり助けたりする矛盾。それが彼を一層人間くさいキャラクターとさせるのだが、虎杖と過ごした時間による心境変化もあるだろう。それに、騙されたことさえ、一般人として死滅回游に巻き込まれた麗美の生存本能による行動だと理解していたはずなのだ。だからこそ、そんな彼が彼女に対して心底嫌悪したのは、裏切り行為そのものというより、爆発から庇って命を救った、その“善意”を目の当たりにしてもまだレジィのような自分のことを気にかけない人間からの“口先の軽い言葉”に縋ろうとする姿勢だった。

 そうやって人の善意を簡単に踏みにじるくせに、愛されたいだの、守られたいだの“善意”を求める。コガネから虎杖によるルール追加がアナウンスされたのと時を同じくして、麗美に踏み躙られた伏黒の善の側面は影の中に沈んでいく。虎杖が日車から点を譲渡されたと知った時に浮かべた笑みは、彼の無事に対する安堵と同時に、何かを“託した”ようにも思える。それは善や倫理、人間性そのものなのか。

 そこから伏黒は、明確な殺意を持って針と対峙し、彼を殺した。死滅回游という理不尽な殺し合いの中で、虎杖が「誰も殺したくない」と自身の魂をすり減らし、罪悪感に苛まれながらもがき苦しむのとは対照的に、伏黒の精神はこの瞬間、ある種の「諦念」と「覚悟」の領域に達したのだ。万人に手を差し伸べようとして傷だらけになる光の主人公・虎杖と、たった一つの光(姉)を守るために影の底へと沈んでいくことを選んだ伏黒。

 あらゆる物体を体にぶつけられ、刃物を刺され、ボロボロになった状態で未完成の領域「嵌合暗翳庭」を展開し、底知れぬ影の世界へとレジィを引きずり込む。バトルシーンとしての“アツさ”がある一方で、ふと気づいてしまうのだ。業を背負う覚悟を決め、自らをも覆い被せた暗闇の中で命を削る彼の危うさに。

■放送情報
TVアニメ第3期『呪術廻戦「死滅回游 前編」』
MBS/TBS系28局“スーパーアニメイズム TURBO”枠にて、毎週木曜24:26~全国同時放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、浪川大輔、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介、丹羽弘美
副監督:高田陽介
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:King Gnu「AIZO」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:jo0ji「よあけのうた」(Sony Music Labels)
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:jujutsukaisen.jp
公式X(旧Twitter)https://x.com/animejujutsu

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