『ばけばけ』髙石あかり×トミー・バストウの“終わり”が漂う愛おしい散歩 秘密にハラハラ

 仕事がないヘブン(トミー・バストウ)の苦悩とあたたかい日常が同居するNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第118話。

 ヘブンが帝大をクビになってしまったという“秘密”を司之介(岡部たかし)に打ち明け、ミルクホールから一緒に帰宅すると家には、教え子の丈(杉田雷麟)が来ていて子供たちと遊んでいた。丈は現在、帝大で学んでいる。もちろんヘブンがいなくなったということも知っていたので、司之介は“秘密”が漏れないよう、丈を仲間に引き入れる。

 だが、もともと隠し事が苦手な男性陣は、丈がヘブンに「久しぶり」と言ったり、「いつも見かけている」と言ったり、すぐにボロが出そうなしどろもどろぶり。そしてこういうときに限って女性陣は勘が鋭く、丈の言葉に対してクマ(夏目透羽)が「さっきは『久しぶり』って……」と突っ込んできて、ヒヤリ。もう一歩踏み込まれたらバレてしまうところだったが、そこはなんとか堪えることができた。いつもならコミカルな展開でほっこりするところだが、今はハラハラしてしまう。

 司之介が桃源郷と呼ぶ東京の暮らしは穏やかそのもので、だからこそヘブンが今の生活を守りたい気持ちも伝わってくる。だが、そのせいでヘブン1人が闇を背負いつつあるのも事実だ。イラついた様子でタバコを燻らせるヘブンがその煙から覗かせる顔は、まるで鬼や妖怪のようであり、本作のテーマの一つに「怪談」があることを思い出させるものとなっていた。

 闇堕ちしそうなヘブンの心をそっと支えているのがトキ(髙石あかり)。彼が執筆に行き詰まっていると思ったトキは、ヘブンを散歩に誘い、2人きりの時間を過ごす。相変わらず日本の文化に心惹かれ、訪れた寺にずっといたい、「ボウサン、ナリタイ」と言い出すヘブン。トキは驚きながら「生まれ変わる、したら、この寺、坊さん、なりましょう」と笑う。でもヘブンは生まれ変わるなら蚊になって、嫌いな学長の血を吸いたいらしい。心静かに日々を過ごしたい。学長に物申したい。そんな本音がポロリと出た瞬間だ。何も知らないトキは、楽しそうに笑っている。本当にたわいもなく、仕事にも生活にも関係のない会話。そんな言葉をかわし、トキと笑い合っているうちに、ヘブンの顔にも笑顔が戻り、心が少し軽くなった様子が見てとれる。

 最終週を目前にしているからだろうが、トキとヘブンが出会ったときのことに思いを馳せてしまうことが増えた。一番最初はヘブンから“シジミさん”と呼ばれていたトキ。それが一瞬、怪談語りの得意な“おトキ師匠”になって、“おトキさん”になり、今や“ママさん”だ。一方のヘブンも“異人さん”として出会い、“ヘブン先生”としてお世話をし、“ヘブンさん”になって今や“パパさん”。名前の呼び方とともに関係性が変化し、一緒に子を育て支えあう夫婦になっている2人。末長く幸せであってほしいと願ってしまう。

 そんな中、ヘブンはアメリカのイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)へ本の内容にするアイデアがないか、そして教師の仕事がないかの手紙を送っていた。あたたかい支えがあっても、現実は自分で変えていかねばならない。まだ人知れずもがき苦しむヘブンの姿が切ない。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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