『ザ・クロウ』ビル・スカルスガルドの凄み ハリウッドとは思えない残酷描写と復讐の果て

 こうした幸せな日々をたっぷり見せた後だからこそ、もう一つのポイントが光り輝く。それは度を超えた残酷描写だ。本作はこれまで作られたどの『クロウ』よりも、ぶっちぎりで血みどろである。クロウは不死身の戦士だが、決して無敵の超人ではない。運動能力は普通の人間であり、傷つけば血を流し、痛みにもがき苦しむ。本作はこの点に注目し、とにかくクロウとなったエリックが悲惨な目に遭うところ、そして悪党を悲惨な目に遭わせるところを執拗に捉える。内臓が飛び出し、足が砕け、それでも前に進もうとするエリックの姿は、前半とのギャップもあって、「あのぅ……一生懸命なのは分かるんですが、もういいんじゃないでしょうか」と声をかけたくなること必至だ。

 そんなエリックの血みどろの復讐行脚は、クライマックスでとうとう大爆発。日本刀を片手にカチこみ(そう呼びたくなる正面突破っぷりである)をかけるエリックを、銃で武装したガードマンたちが襲うのだが……これはもう観ていただければ分かるのだが、エリックは「死なない」という個性を活かして、ムチャクチャな戦い方でそれを迎え撃つ。自分のダメージを一切気にせず、さらに敵にも一切の情けをかけない姿は、まさに「復讐の天使」と呼ぶに相応しい。そうした表現が好きな私としては、ここで元は取れた感があった。

 もちろん、本作もまたこれまでの『クロウ』と同様に、オリジナルには届かない。しかし、ビル・スカルスガルドという役者の非凡な佇まいと、エモーショナルな瞬間、思い切った残酷表現の数々、これらには一定の価値がある。そして偉大なオリジナルに果敢に挑戦した、今を生きる映画人たちの意地は感じられるはずだ。……とはいえ、クライマックスのバトルは本当にハードコアすぎたようにも思いますよ。悪党たちがゼロ年代の三池崇史の映画のような凄い死に方をしていたので、やる気はヒシヒシと感じつつ、「これ、大丈夫なんですか? ハリウッドのメジャー映画ですよね?」と心配になりました。

■公開情報
『ザ・クロウ』
3月6日(金)全国公開
出演:ビル・スカルスガルド、FKA ツイッグス、ダニー・ヒューストン
監督:ルパート・サンダース
音楽:フォルカー・バーテルマン
撮影:スティーヴ・アニス
編集:クリス・ディケンズ、ニール・スミス
配給:クロックワークス
2024年/イギリス・フランス・アメリカ/英語/111分/5.1ch/シネマスコープ/原題:The Crow/字幕翻訳:平井かおり/ R15+
©2024 Yellow Flower LLC
公式サイト:https://klockworx.com/movies/thecrow/
公式X(旧Twitter):@THECROWmoviejp

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