深田晃司が『恋愛裁判』で獲得した普遍性と現代性 “魔法使い”であり続けるために
大勢のファンたちと特別で親密な関係性を紡ぐことで「世界を変える魔法」を実現しようとしてきたアイドルが、自分以外に観客のいないビルの屋上で無名の若者が軽々と使う魔法を目にしたとき、何を思っただろうか。それは恋心が芽生える瞬間でもあり、自分が固執してきたアイドルの世界以外にも「その魔法」を使える者が存在するのだと、世界の広さを痛感した瞬間だったかもしれない。
そこから先に真衣の前に立ちはだかるのは、魔法の力を無慈悲に奪い、信じられなくするように促す「現実」の残酷な仕打ちである。その最たるものが、運営側の訴えによって起こされる裁判だ。相手のスタミナ切れをしぶとく待ち続けることが現代の裁判の戦略であり、「和解」というフレーズに隠された卑劣な罠も本作では示される。魔法使いだったはずの敬も、経済的困窮という現実の前に折れていかざるをえない。
だが、真衣は折れない。現実社会に帰還する覚悟を決めつつ、許しがたい現実の不条理をスカーレット・ウィッチのごとくねじ曲げんと、アイドルとして鍛え上げてきた強さを最後まで貫く。抑圧する側にとって、それは「本物の魔女の力」に見えたことだろう。演じる齊藤京子の憤怒と逞しさが胸を打つ。彼女の実際のアイドル活動とこの役柄を重ね合わせるのは門外漢なので控えておくが、間違いなくハマり役である。終盤、彼女の共闘者として登場するのが、圧倒的な画面の支配力を誇る『ユンヒへ』(2020年)『箱男』(2024年)の中村優子であるところも嬉しい。
また、グループのなかでも毛色の異なるチームメイト・梨紗役に扮した小川未祐の好演も特筆ものだ。主人公の苦闘を脇目に、しれっと最適解を掴み取るサバイブ力が痛快。この味わい深さは最新型韓流アイドル映画の快作『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(2025年・Netflix)にもなかった要素だ。アイドル映画であると同時に、現代の女性映画、社会派ドラマ、そして反骨の闘争劇としても成立させた深田監督のチャレンジは、ぜひ劇場で見届けてほしい。
■公開情報
『恋愛裁判』
全国公開中
出演:齊藤京子、倉悠貴、仲村悠菜、小川未祐、今村美月、桜ひなの、唐田えりか、津田健次郎
企画・脚本・監督:深田晃司
共同脚本:三谷伸太朗
音楽:agehasprings
主題歌:「Dawn」yama (Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:ノックオンウッド、TOHOスタジオ
配給:東宝
製作:「恋愛裁判」製作委員会
©2025「恋愛裁判」製作委員会
公式サイト:https://renai-saiban.toho.co.jp/
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