『呪術廻戦』「死滅回遊」は情報量が多すぎ? デスゲームものにみる“ルール説明問題”
対して『死亡遊戯で飯を食う。』は、ルールを“言わない”ことで走り抜ける設計を取った。第1話こそ初回60分の拡大放送で一つ目のゲームの内容を一気に消化したが、勝利条件の明確な説明はなく、あくまでプレイヤーたちの推測をもとに進んでいくスタイルとなった。
上野壮大監督は前作『義妹生活』でも「心情を間接的に見せる」演出を貫いていたが、本作ではさらに振り切っている。セリフのない時間が長く、俯瞰の構図が多用され、視聴者は主人公・幽鬼の言動を追いながら、ルールを自分で察していくしかない。だからこそ「わからないまま引きずり込まれる」感覚が快感になる人もいれば、「何が起きているのかつかめない」とストレスを感じる人もいる。SNSで評価が大きく割れているのは、この設計ゆえだろう。
両作が浮き彫りにしているのは、視聴者の負荷をどこに置くかという選択の違いだ。死滅回遊は「ルールがわかるまでの負荷」を序盤でまとめて引き受けさせ、理解した視聴者ほど深く楽しめる構造を取る。死亡遊戯は「ルールのわからなさの負荷」を視聴者に預けたまま体験の速度を優先し、後から意味がつながる快感に賭けている。
では、過去のデスゲーム系アニメはこの“ルール説明問題”にどう向き合ってきたのか。振り返ると、いくつかの型が見えてくる。
ひとつは「反復で覚えさせる」やり方である。例えば『GANTZ』は、転送、出撃、星人の討伐、点数集計というサイクルを積み重ね、ルールを反復で身体に入れていくタイプだ。少し種類は違うが、吉田恵里香がシリーズ構成を担当した『神之塔 -Tower of God-』も、階層ごとに試験が繰り返される構造で、複雑な世界を少しずつ解き明かしていく。反復は地味だがわかりやすく、確実に効く手法だ。
もうひとつは「勝ち筋を1本にする」やり方。ルールの細部は毎回変わったとしても、「結局なにを達成すれば勝ち(ゴール)なのか」だけは大きく見えるようにして、視聴者の現在地を失わせない方法だ。『BTOOOM!』なら「ICチップを8つ集めれば脱出」、『未来日記』なら「最後の1人が次の時空王」、『十二大戦』なら「獣石を12個集めた者が勝者」。ゴールが1本通っていれば、途中の条件が入り組んでも迷子にはなりにくい。『死亡遊戯で飯を食う。』で幽鬼が掲げる“99回クリア”も、大きな「勝ち筋」に当たるだろう(あくまで幽鬼にとって、ではあるが)。
最後が「説明そのものを見せ場にしてしまう」やり方だ。このケースではキャラの濃い司会がいたり、ルール説明そのものに面白さがあったりする。『カイジ』では、限定ジャンケンのルールが提示される場面そのものが緊張感を生み、以降の駆け引きの見え方を決定づける。4月から放送予定の『LIAR GAME』も、アニメとしてどう料理されるかは始まってみないとわからないが、実写版の印象からすればこの系譜に連なりそうだ。死滅回遊が天元に1話まるごと使わせたのは、天元というキャラの登場でインパクトを与えつつ、概念図でルールをいったん“見える化”してから次の局面へ進むためだったのだろう。
デスゲームものの人気が続く以上、今後もこのジャンルのアニメ化は増えていくだろう。そのとき、制作側は必ずこの「ルールをどう伝えるか」という問題にぶつかることになる。30分枠を積み重ねるテレビアニメだからこそ、原作があったとしても、ルールの見せ方には監督や脚本家の判断がにじむ。むしろ、作り手の色が最も出やすい部分と言えるかもしれない。
過去に「面白い」と感じたデスゲーム作品は、どんなルール説明をしていただろうか。その補助線を引いて観直すと、作品の輪郭がまた少し変わって見えてくる。
参照
※ https://jujutsukaisen.jp/shimetsukaiyu/
■放送情報
TVアニメ第3期『呪術廻戦「死滅回游 前編」』
MBS/TBS系28局“スーパーアニメイズム TURBO”枠にて、毎週木曜24:26~全国同時放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、浪川大輔、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介、丹羽弘美
副監督:高田陽介
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:King Gnu「AIZO」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:jo0ji「よあけのうた」(Sony Music Labels)
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:jujutsukaisen.jp
公式X(旧Twitter)https://x.com/animejujutsu