シム・ウンギョンが考える人間の本質 『火星の女王』は「集中力と自然さを発揮できた」

母国語での芝居だからこそ発揮できたもの

――このドラマには海外出身の俳優さんが多数出演し、それぞれ母国語でお芝居をされています。多言語でのお芝居のやりとりはいかがでしたか?

シム・ウンギョン:撮影前は言語が統一されていないとお芝居しにくいんじゃないかなと正直思っていました。でも実際に撮影してみたら、たしかにスクリプターさんは大変そうでしたが、お芝居の面ではかなりメリットを感じて。私自身、日本の作品に韓国語で挑むのはほぼ初めてだったんですが、母国語だからこそ、いつも以上に集中力と自然さを発揮できたように思います。そのおかげで他の方々とも熱量高くお芝居でコミュニケーションを取れましたし、本当に貴重な経験でした。

――ヒロイン役のスリ・リンさんをはじめ、日本の作品に初めて出演される方にとって、日韓で活躍されてきたシムさんは心強い存在だったのではないかと思います。シムさんご自身、これまでの経験が今回の現場で生かされたと感じる場面はありましたか?

シム・ウンギョン:やはり今回のように多言語が飛び交う現場にも比較的すぐ慣れることができたのは、日韓で日本と韓国をまたいで活動してきた経験があったからだと思います。そういう意味では、今までのことは決して無駄ではなかったと改めて感じさせてくれた作品になりました。今年も日本の作品には『火星の女王』と映画『旅と日々』の2本に出演し、2026年に韓国で放送される『韓国でビルオーナーになる方法』の撮影があったりと、いろんな国の方と、いろんな作品でご一緒することができたことに感無量です。

――本作は、NHKの放送100年を記念した「宇宙・未来プロジェクト」の一環で制作されました。最後にシムさんが100年後の宇宙のために、今からやっていきたいことを教えてください。

シム・ウンギョン:今の時代はIT技術やAIの進化によって、どんどん人間の居場所が失われていますよね。これから先はもっとその動きが加速していくと思いますが、どこまでいっても人間であることからは逃れられないじゃないですか。いつ、どこで生まれても、人間は人間。それこそ、100年後の火星で生まれても同じです。本作のテーマとも重なりますが、じゃあ時代や場所に左右されない人間の本質とは何なのか。いろんなことが便利になっていく世の中で、人間だからこそ、できることは何なのか。そういうことを常に自問自答しながら生きていく必要があるのかなと思います。

■放送情報
放送100年特集ドラマ『火星の女王』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜23:29放送 ※全3回
※NHK ONE(新NHK プラス)で同時・見逃し配信予定
出演:スリ・リン、菅田将暉、シム・ウンギョン、岸井ゆきの、菅原小春、宮沢氷魚、松尾スズキ、滝藤賢一、デイェミ・オカンラウォン、サンディ・チャン、宮沢りえ 吉岡秀隆 ほか
主題歌:「記憶と引力」君島大空、坂東祐大、yuma yamaguchi feat. ディスク・マイナーズ
原作:小川哲
脚本:吉田玲子
音楽:坂東祐大、yuma yamaguchi
制作統括:渡辺悟
プロデューサー:石川慎一郎、原英輔、大久保篤、服部竜馬
演出:西村武五郎、川上剛
写真提供=NHK

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