立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第53回

立川シネマシティ企画担当が振り返る2025年の映画館 映画界全体の構造に大きな変化が

 あと2025年で個人的に興味深かったのは『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のヒットです。主に男性向けジャンル作品が、ブロマンス要素があることで予想外(?)のヒットをするのは10年以上前から続いていて、「『パシフィック・リム』の巨大ロボ映画になぜこれほど女性が!?」と驚いたのももう懐かしいですが、インド映画、ロシア戦車映画に続き、香港カンフー映画でもこれが起こるのか、と。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

 香港カンフージャンルだと、結構女性が多いと感じた『イップ・マン』シリーズでも、シネマシティでは男女比7:3でした。ところが『トワイライト・ウォリアーズ』ではこれが3:7に完全逆転。洋画の興行力がしばらく落ちていている中で、時折こういうヒットがあると嬉しくなります。この傾向は続いてほしいものです。

 ヒットの報せもあれば、しかし年末に悲しいニュースが飛び込んできました。ワーナーブラザース ジャパンの撤退です。アメリカの本体のほうもNetflixによる買収のニュースが後に出てきて、映画界全体の構造が変わりつつあることがはっきりと眼前に示されました。

 今件に関しては詳しいことはまだまったくわかりませんが、映画館として懸念されることは、潤沢なアーカイブがどういう扱いになるのか、ということです。特にシネマシティではよく過去作を集めた企画上映や、シリーズ作品の振り返り上映などを行っていますが、そのあたりの過去作上映が今後も続けられるかどうかです。21世紀FOXがディズニー傘下に入ってから、そのアーカイブの上映がなかなか難しくなったようなことが今後起こりうるかもしれません。

 クリストファー・ノーラン作品、ザック・スナイダー作品、『マッドマックス』シリーズ、DC作品、『ハリー・ポッター』シリーズなどなど、数え切れないほど人気の作品群があります。買収したNetflixの配信ではこの豊富なアーカイブに触れやすくなるのでしょうが、映画館では難しくなるのか、どうなるのか。

 2025年はまだまだ映画館というカルチャーは健在だということを示すと同時に、2023年にMGMがAmazon傘下になったときからの、徐々に動画配信会社の勢力に飲み込まれていく未来を垣間見るような年になったと思います。

 映画館の未来は希望も不安もないまぜですが、まあそれは映画に限らずどの業界もさほど変わりはしないでしょう。

 2026年もどんどん新しいこと、面白いことに挑戦していきます。

 You ain‘t heard nothin’ yet !(お楽しみはこれからだ)

■立川シネマシティ
『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:https://cinemacity.co.jp/

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