リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2025年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、2025年に日本で劇場公開・放送・配信されたアニメーションから、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第10回の選者は、エンタメ系ライターのキットゥン希美。（編集部）

1. 『メダリスト』
2. 『前橋ウィッチーズ』
3. 『光が死んだ夏』
4. 『グノーシア』
5. 『ダンダダン』第2期
6. 『ロックは淑女の嗜みでして』
7. 『九龍ジェネリックロマンス』
8. 『夢中さ、きみに。』
9. 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
10. 『LAZARUS ラザロ』

　今回は2025年に放送されたアニメから、個人的に興味を引かれた作品を10本選出させてもらった。ただしアニメ全般ではなく、劇場アニメやWebアニメは除外し、TVアニメのみに限定している。それぞれの選出理由について簡単に説明していきたい。

『メダリスト』

　そもそも今年人気を呼んだアニメの傾向として、一方に人気マンガを圧倒的なクオリティでアニメ化した作品、もう一方にクリエイターの個性が発揮されたオリジナル作品があったように思われる。前者を代表する作品の1つが『メダリスト』だ。

　今どき珍しいほど直球の“熱い”ストーリー、主役コンビを演じた春瀬なつみと大塚剛央の魂がこもった演技、モーションキャプチャーを活用しつつアニメ的なケレンみを残したスケート描写など、あまりにも満足度が高い鑑賞体験だった。また、「原作付きアニメは作り手の情熱が何よりも重要」ということをあらためて実感させてくれる作品でもあったように思う。

『前橋ウィッチーズ』

　そしてオリジナルアニメのなかでとびきり強い衝撃を受けたのは、『前橋ウィッチーズ』。『ぼっち・ざ・ろっく！』や『虎に翼』の吉田恵里香がシリーズ構成・脚本を手掛けた物語で、現代的なテーマを扱っているが、取ってつけた感じがなく、すっと心に入ってくるストーリーとなっていた。

　少女たちが抱える等身大の悩みを上から目線の正論や綺麗ごとで解決するのではなく、どこまでも同じ目線に立って寄り添う作劇だったため、安心して感情移入できた。なにより少女たちがアニメ的でありながらリアルな質感をまとっていて、生き生きとした魅力に満ちていたことが印象に残っている。

『光が死んだ夏』

　3番目に挙げた『光が死んだ夏』は良質なホラーでありながら、強烈な愛情と執着に縛られた少年たちの関係性を描き出した物語としてもよくできていた。原作にはないアニメオリジナルの要素として、合唱コンクールの描写が入っているのだが、それによってドラマ的な盛り上がりが一段と増していた印象だ。

　また、耳をつんざくような蝉の鳴き声をはじめとして、ノスタルジックな夏の風景を生々しく描写しているため、“夏に観たいアニメ”としてこの先もずっと記憶に残りそうだ。

『グノーシア』

　4番目の『グノーシア』は人気インディーゲームを原作とした作品。アニメ化が難しそうな内容にもかかわらず、誰が観ても分かりやすいシナリオに落とし込んでいることに驚かされた。人狼をモチーフとした推理劇とループものを組み合わせた設定はきわめて斬新で、1話目から目を離せない展開の連続だった。

『ダンダダン』第2期

　バトルもののアニメで面白かった今年の作品といえば、『ダンダダン』が思い浮かぶ。サイエンスSARUの作画力が存分に活かされており、ド派手でスタイリッシュなアクションを堪能させてくれた。また、若山詩音演じる綾瀬桃が“主人公に守られるだけのヒロイン”ではなかったことも大きな魅力。自分の力で未来を切り拓いていく姿が、現代的なヒロイン像を体現しているように思われた。