『ノンレムの窓』はバカリズムファンなら必見 『世にも』に通じるパーソナルな奇妙さ

 そして、各話の間には、窓先案内人を務めるバカリズムが謎の女・マドカ(声・斉藤由貴)と会話をする場面が挟まれる。

 3つの窓から、目元が鳥で隠れた顔、上半身、脚が伸びているマドカとバカリズムが心理テスト風の会話をしている様子は笑えると同時にどこか幻想的で、だんだん夢の中を彷徨っているような気持ちになっていく。

 タイトルにあるノンレムとは「深い眠り」を意味するノンレム睡眠からとられており、どのエピソードも夢と現実の狭間を漂うような、現実的だけどリアルだけど幻想的、非現実的な状況だけどリアリティがあるといった虚実の狭間を行き来するような、不思議な手触りとなっている。

 この奇妙な感覚は『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)や『ホットスポット』(日本テレビ系)といったドラマの脚本でバカリズムが展開している世界に通底している手触りで、どれだけタイムリープや超能力といったSF的アイデアが盛り込まれていても地に足のついたリアルな手触りがある。その一方で、『住住』(日本テレビ系)や『架空OL日記』(読売テレビ・日本テレビ系)のように徹底してリアルに作ったドラマの中には、現実から半歩ズレた不思議な感覚が生まれるのがバカリズムワールドで、彼の作品の中にある奇妙な感触が、番組全体から漂っているのが『ノンレムの窓』シリーズの魅力だと言えるだろう。

 おそらく一番似ているのは、タモリが進行役を務めるオムニバスドラマ『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の手触りだが、タモリと違いバカリズムはドラマの脚本も書いているので、奇妙さの感覚はよりパーソナルなものとなっている。
  
 バカリズムを筆頭に、近年のお笑い芸人は多芸で、タレントだけでなく、司会、文化人、作家として、多ジャンルで活躍することは当たり前のこととなっている。

 だが、その一方で『ドリフ大爆笑』(TBS系)のような、細部まで丁寧に作り込まれたコントバラエティがテレビで制作される機会はどんどん減っている。

 そんな中、宮藤官九郎や福田雄一が脚本を手掛ける連続ドラマは、2000年代以降テレビドラマというフォーマットを用いたコント番組として受容されており、シチュエーションやキャラクターが作り込まれた「お笑い」が好きなテレビ視聴者の期待に応えていた側面が大きかった。

 バカリズムの連続ドラマはその系譜にあり、ドラマの枠で展開される作り込まれたコント番組として観られている側面が大きいのだが、歴史を踏まえるとこれはある種の原点回帰で、テレビ番組の王道を突き進んでいると言える。

 そんな、ドラマとコントの融合という観点から観たときに『ノンレムの窓』はとても重要な番組であり、芸人でありドラマ脚本家でもあるバカリズムが表現している夢と現実、シリアスと笑いが交差する不思議な世界を知る上でも、とても貴重な番組だと言えるだろう。

■放送情報
『ノンレムの窓2025・冬』
日本テレビ系にて、12月21日(日)22:30~23:25放送
出演:バカリズム(窓先案内人)、斉藤由貴(声のみ出演)ほか

『グラデーション』
主演:山本耕史、河内大和、前原滉、吉住
脚本:バカリズム
監督:内田秀実

『トイレットペーパーレース』
主演:西野七瀬、浅利陽介
脚本:畑雅文
監督:椿本慶次郎

総合演出:内田秀実
統括プロデューサー:水嶋陽、櫻井雄一(ソケット)
プロデューサー:榊原真由子、藤山高浩、岸根明、溝口道勇(ソケット)
チーフプロデューサー:松本京子
企画協力:小林伸也(マセキ芸能社)
制作協力:ソケット
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/nonrem/
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