『ホーム・アローン』“バトル”はまさかの15分? 全編にあふれる“欲張らない”気持ちよさ

 12月19日、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて『ホーム・アローン』(1990年)が2年ぶりに放送される。もはや「クリスマス&年末シーズンの定番といえばコレ」という風格すら感じるタイトルだ。

 今回オンエアされるのは、マコーレー・カルキン演じる主人公ケヴィンの声を『クレヨンしんちゃん』の初代・野原しんのすけ役でおなじみの矢島晶子が担当したTV吹替版バージョン(初放送は1994年10月のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』)。ソフト版とテレビ朝日系『日曜洋画劇場』版では折笠愛がケヴィン役を演じたが、矢島版も人気が高い。2015年に発売された『ホーム・アローン』〈日本語吹替完全版〉コレクターズ・ブルーレイボックスには3バージョンの吹替版が収録されたが、現在びっくりするようなプレミア価格がついていたりするので、未見の吹替版ファンは見逃し厳禁である。

 矢島晶子は、ソフト吹替版では奇しくもマコーレーの実弟キーラン・カルキン扮する従兄弟のフラー役の声を担当していた(正直、セリフはほとんどない)。今回のTV版では、折笠愛の芸達者ぶりともまたひと味違う、ナチュラルな少年らしさや愛らしさ・快活さを楽しんでほしい。前半の注目ポイントは、意地悪な兄バズ(デヴィン・ラトレイ)役を演じる高木渉との掛け合い。「少年役って『名探偵コナン』の小嶋元太だけじゃなかったのか!」と驚くこと請け合いだ(当然ひとクセある役なのが嬉しい)。

 ジョー・ペシ演じる泥棒ハリー役の吹き替えは、レジェンド声優の青野武。ソフト版からの連続登板だけあって、言うまでもなくハマり役だ。そして、相棒マーヴ(ダニエル・スターン)役を担当したのは、ベテラン江原正士。何しろ多才かつ多作なので、ここで洋画吹替版限定で江原正士の泥棒役ベスト3を選ぶとすれば、『パニック・ルーム』(2002年)のドワイト・ヨーカム、『レディ・キラーズ』(2004年)のトム・ハンクス、そして本作になるだろうか(個人の感想です)。もちろんふたりとも続編『ホーム・アローン2』(1992年)のTV吹替版に矢島晶子らとともに続投している。

 つい吹き替えの話から始めてしまったが、もちろん作品自体の面白さも折り紙付きだ。なんとなく『ホーム・アローン』といえば「8歳の男の子が泥棒コンビをギタギタにぶちのめす話」というイメージを抱きがちだが、実は劇中、主人公ケヴィン少年と泥棒たちのバトルシーンは思ったより短い。実質、クライマックスの15分ほどに凝縮されている。むしろ作品全体の主題はタイトルどおり「もし子どもがひとりぼっちでクリスマスを過ごすことになったら?」という部分であって、そこは今回ぜひ改めて味わってほしい。

 クリスマス旅行でパリに向かった家族に置き去りにされたケヴィン少年は、最初は好き放題に「初めてのひとり暮らし」を謳歌するものの、徐々に寂しさや心細さ、危機感といった感情を募らせていく。そして、わが家をつけ狙う泥棒コンビと単身戦う決意を固めるまでの経緯が、じっくり丁寧にグラデーション豊かに描かれるからこそ、クライマックスの爆発的な盛り上がりに繋がるのだ。実はその積み重ねこそが、本作最大の見どころなのかもしれない。

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