『WIND BREAKER』『あんぱん』『あんたが』 濱尾ノリタカ、2025年は“大発見”された1年に

 『WIND BREAKER』で十亀を演じる濱尾は、色気を惜しみなく解き放っていた。兎耳山(山下幸輝)と共に「力の絶対信仰」を掲げる中で、十亀の瞳にふと迷いが揺らめく。その一瞬の揺らぎから滲み出る「色気」に触れた瞬間、背筋がぞくりとする。

 十亀は桜遥にはどこか冷めた表情を見せる一方で、兎耳山に向ける眼差しは優しい。その美しい瞳を見つめていると、思わず画面に吸い込まれるような感覚に襲われる。濱尾が数々の作品に引っ張りだこなのも、この抗えない「瞳の吸引力」にあるのかもしれない。

 その瞳を一度目にすれば忘れられず、もう一度触れたくなるのだ。

 物語が後半へ進むにつれ、哀愁を帯びた十亀の瞳の「秘密」が解き明かされていく。十亀が戦う理由は、兎耳山が頭取となり、弱き者をいたぶり始めたその瞬間に芽生え始める。兎耳山に「いつまでも笑っていてほしい」と願っていた十亀は、兎耳山の変貌ぶりに戸惑いを隠せず、大きな瞳を見開く。

 やがて兎耳山の暴力が次第に苛烈さを増す中で、十亀はそれを止めようと立ち上がり、望んでいないはずの役割「誰かに暴力を振るう者」を自ら背負ってしまう。その瞬間、十亀の潤んだ瞳から光が消え、やがてその目つきが「狂気」へと変貌していく。

 ラストシーンで、十亀はこれまでにない瞳を見せる。その瞬間に、十亀が背負って来た葛藤や心の叫びが感じられ、作品は一層の深みを帯びていく。兎耳山を思う気持ちは変わらずにありながらもなお、肝心なことからは目を逸らしてきた十亀。はたして、十亀の目線には何があるのか。その視線の奥にあるものに触れた瞬間、きっと誰もが十亀をさらに好きになるはずだ。

■公開情報
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
全国公開中
出演:水上恒司、木戸大聖、八木莉可子、綱啓永、JUNON(BE:FIRST)、中沢元紀、曽田陵介、萩原護、髙橋里恩、山下幸輝、濱尾ノリタカ、上杉柊平
原作:にいさとる『WIND BREAKER』(講談社「マガジンポケット」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:政池洋佑
プロデューサー:加茂義隆
音楽:Yaffle、桜木力丸
主題歌:BE:FIRST「Stay Strong」(B-ME)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©にいさとる/講談社 ©2025「WIND BREAKER」製作委員会
公式サイト:wb-movie.jp  
公式X(旧Twitter):@winbre_movie

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