妻夫木聡の涙になぜ胸を打たれるのか 『ザ・ロイヤルファミリー』で貫いたありのままの“生”
妻夫木の演じる役に嘘偽りがなく、その涙や表情に本物を感じるのは、体験を通して役作りをすることで得られる「生」があるからなのかもしれない。その生の感情、生の情熱、生の存在感が、観る者の心を動かすのだろう。
『ザ・ロイヤルファミリー』では、原作では語り手だった栗須を主役に置いている。栗須は実直で真っ直ぐな性格で、地味で、どこにでもいそうな男だ。それでいて主役を張るというのは、実は難役ではないだろうか。控えめで一見個性のない人物を主役にできるのは、妻夫木にしかできない芸当なのかもしれない。実際、加藤プロデューサーと原作者の早見和真からの指名であったことも伝えられている。それにも納得だ。
妻夫木は自身について、「偽りの自分は見せないし、見合っていないこともしない。どうありたいかという欲求に素直に生きていると、ふと新しい自分に出会える気がします」(2)と語っている。嘘偽りないリアルな存在感は、単純なありのままの姿ではなく、理想の「生」の姿にたどり着くために、演技者として自らを磨いてきた結果の「ありのまま」だということなのだろう。44歳となった妻夫木が、演技者として到達した真骨頂だ。
『ザ・ロイヤルファミリー』では、栗須が元恋人の野崎加奈子(松本若菜)と結ばれるシーンもあり、そんな場面ではしっかり大人の色っぽさも見せた妻夫木。ラストは、それぞれの思いをのせて、ファミリーが夢の大舞台・有馬記念に向かうことになるはずだ。山王耕造(佐藤浩市)、耕一(目黒蓮)親子の「継承」をはじめ、生産者、調教師、ジョッキーと、さまざまな人たちの思いをのせてファミリーが走る姿に、栗須はどんな表情を見せてくれるだろうか。しっかりとその演技を見届けたい。
参照
※1. https://www.asahi.com/and/w/article/15767891
※2. https://precious.jp/articles/-/56568
早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。
■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
第1話ゲスト:武豊、丸田恭介、菅原隆一、今村聖奈
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs