日韓双方で活動する俳優・ジェイルが語る現在地 「最終目標は二宮和也と共演すること」
監督に近い目線を持っているのが自身の強み
――ジェイルさんがアイドルと俳優の両方を目指していたのは、二宮さんから影響を受けたのでしょうか?
ジェイル:子どもの頃から二宮さんの活動を見てきたので、無意識に影響を受けていた部分は大いにあると思います。ただ元からアイドルになりたかったわけではなく、最初は演技も歌も好きだったので、ミュージカル俳優を目指していたんです。でも、ミュージカルスクールに通っているうちに自分には向いていないと気づいてしまって。俳優一本でいこうと思いましたが、どうしても歌も諦めきれず、K-POPの事務所に入りました。
――練習生の期間にはどのようなことを学びましたか?
ジェイル:練習生生活では自己管理の重要性と、イメージ形成について学ぶことができました。具体的なエピソードを話すと、グループを組む際に、私は数あるポジションの中からサブボーカルを志望していましたが、会社からはラップ担当を勧められたんです。その時に、自分自身のイメージと、他人から見たイメージは大きく異なることに気づきました。というのも、社会批判にも用いられるラップは鋭いイメージがあったので、自分には合わないと思っていたんです。でも、実際にやってみると案外しっくりきて、客観的な視点を持つことは大事だなと思わされました。
――ジェイルさんは大学と大学院の両方で映画演出を専攻されていたそうですが、なぜ「演技」ではなく「演出」を学ぼうと思ったのでしょうか。
ジェイル:韓国では芸術系の学部は総じて競争率が激しいため、受験対策用の塾があったんです。私もはじめは演技科を希望して通っていたんですが、そこの先生に「あなたはストーリーテリングの才能があるから、一つぐらいは演出科で出願してみたらどうか」と言われて両方出願しました。結果はどちらも合格で迷いましたが、ディレクションもできる俳優になりたいと思い、演出のほうを専攻することにしたんです。
――ジェイルさんご自身は演出を学んだことが、俳優業にどう活かされていると感じますか?
ジェイル:演出科を卒業して最も良かったのは、監督に近い目線を持てるようになったことです。例えば、同じシーンでも感情を爆発させるか、淡々としているかでは物語の印象が大きく変わります。そこを監督が目指している像に照らし合わせて選択できるようになったのは、間違いなく演出を学んだから。加えて大学で映画を分析したり、シナリオ制作を学んだ経験を生かし、監督とはまた違ったアイデアを提示することで、作品をより良くしていくことができるのではないかと考えています。
――その後、SMエンタテインメントで演技トレーナーになった経緯を教えてください。
ジェイル:大学院生になってからもK-POPの練習生を続けていましたが、すでに私はデビューの適齢期を過ぎていました。それでアイドルの夢は諦めて俳優の仕事に邁進することにしましたが、同時にこれまでの多角的な学びを活かしたいと思い、自分のような夢を目指す学生たちに塾で演技や演出を教えていたんです。そんな中で知り合いからオファーを受け、SMエンタテインメントで演技トレーナーを務めることになりました。
最終目標は二宮和也と共演すること
――ジェイルさんはGoogle ChromebookのCMやドラマ『初恋DOGs』(TBS系)に出演されるなど、日本での活動も増えてきています。撮影の中で大変だったことはありますか?
ジェイル:『初恋DOGs』はほんの一瞬だけの出演でしたが、Googleに関しては比較的大きい役で、監督から直接ディレクションを受けました。ただ撮影には通訳さんがいなくて、私自身、日本語の習得が十分でないこともあり、監督の言いたいことはなんとなくわかっても、微妙なニュアンスまでは理解できず、少し悔しかったですね。もちろん、第一に大事なのは私が日本語の勉強をもっと頑張ることですが、通訳できて、かつ演技にも理解がある方が橋渡しになってくださったら、とてもありがたいなと思います。
――今後挑戦してみたいジャンルや役柄はありますか?
ジェイル:目が綺麗だねと言われることが多かったので、メロドラマならその長所が大いに生かせるのではないかと考えています。また私は周りから優しいイメージとクールなイメージの両方を抱かれているようなので、両面性のある悪役を演じてみたいですね。
――日本で一緒にお仕事をされたい方はいるのでしょうか?
ジェイル:最終的な目標は二宮さんと共演することですが、日本には横浜流星さん、高橋文哉さん、北村匠海さん、夏帆さん、安藤サクラさん、黒木華さん、道枝駿佑さん、目黒蓮さんなど、尊敬する俳優の方々がたくさんいます。いつかぜひご一緒したいです。また、学生時代から憧れていた是枝裕和監督の作品にも参加してみたいですね。
――最後にこの記事を読んでいる日本の方にメッセージはありますか?
ジェイル:私のアイデンティティは韓国人ですが、中学生の頃に二宮さんの作品と出会ってから、ずっと日本の芸能界に憧れてきました。目標は明確です。「韓国と日本、二つの文化を理解し、感情として翻訳できる俳優になること」そして「二宮和也さんと同じ作品で呼吸を合わせること」。いま、私はその出発点に立っています。このインタビューを通じて少しでも私に興味を持ってくれる方がいたら嬉しいですし、日韓で活躍する俳優を目指して、これからも演技の技術を磨いていきたいと思っています。2026年1月から始まるドラマ『DREAM STAGE』(TBS系)にも出演しているので、ぜひ見つけてください。