岡田将生が“声優”として開いた扉 『果てしなきスカーレット』で見せた演技の深化
現在の日本のエンターテインメント界は、岡田将生の存在なくして成立しないだろう。それほどまでに、話題となる作品には彼の存在がある。にもかかわらず、これまで岡田は声優業を経験したことがなかった。だから私たちはいま、彼のはじめての挑戦に立ち会うことができている。そう、岡田がメインキャラクターの声を演じた、『果てしなきスカーレット』が封切られたのだ。
この『果てしなきスカーレット』は、『時をかける少女』(2006年)や『サマーウォーズ』(2009年)などの細田守監督の最新作。W・シェイクスピアの『ハムレット』を下敷きに、最愛の父を殺した叔父への復讐を誓うスカーレット王女(芦田愛菜)の旅路を描いたものだ。スカーレットが旅の途上で出会う看護師の青年・聖を岡田が演じている。
本作を鑑賞しての最大の収穫は、先述しているように岡田の初挑戦の機会に立ち会うことができたのはもちろんのこと、彼が声を扱うことに関しても優れた表現者なのだと知れたことだ。岡田の活躍の場は映画やドラマなどの映像作品にとどまらず、この10年ほどは演劇作品にもコンスタントに参加し、舞台に立ち続けてきた。
三浦大輔の作・演出による『物語なき、この世界。』(2021年)といった現代劇のみならず、世界的な劇作家であるテネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』などの名作でも座長を務め上げてきた。しかもなんと2019年には『ハムレット』でもタイトル・ロールを演じている。舞台上では身振り手振りももちろんだが、作家の紡ぎ出した言葉をどのように扱い、観客との対話の中でどう差し出すかが俳優には問われるものだ。岡田はこれに長けている。舞台上の彼を見たことのある方ならば頷いていただけるだろう。