桜田ひより×佐野勇斗『ESCAPE』は“青春ドラマ”として今期No.1 心地よい善意の描き方

 水曜ドラマ(日本テレビ系水曜22時枠)で放送されている『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(以下、『ESCAPE』)は、誘拐犯と人質の奇妙な逃避行を描いた連続ドラマだ。

 物語は、大手製薬会社・八神製薬の社長令嬢・八神結以(桜田ひより)が、3人組の誘拐犯に拉致される場面から始まる。

 誘拐犯は結以の父で八神製薬の社長・慶志(北村一輝)に、今日の18時までに身代金3億円を用意しろと脅迫する。しかし結以の足にはGPSが付けられており、犯人たちの隠れ家には、セキュリティガードが押し寄せる。

 主犯格の斎藤丈治(飯田基祐)は持病の心臓の発作を起こしその場に倒れ、林田大介(佐野勇斗)は結以を連れて車で逃走する。だが、身代金の受け渡し準備のために先に隠れ家から脱出していた山口健二(結木滉星)とも連絡が取れなくなる。

 林田は計画が失敗したと思い、途方に暮れる。しかし、そこで結以は、自分は父親にGPSを付けられ、犯罪者のように監視されていたと告白。結以の話を聞いた林田は、彼女の逃亡を手伝うことに。二人はお互いをハチ(八神結以)、リンダ(林田大介)と呼び合い正体がバレないように行動していたが、やがて二人は指名手配され、追われる立場となってしまう。

 ドラマの中心にあるのは、警察や八神製薬から逃げるハチとリンダの逃亡劇だが、斎藤が誘拐事件を起こそうとした背後にある「八神製薬の闇」と、ハチが持っている触った人間の心が読める「さとり」という超能力の秘密が、物語を引っ張る大きな謎となっている。また、ハチとリンダは正体を隠して、助けてくれそうな知人の元を訪ねるのだが、行く先々で様々なトラブルに巻き込まれてしまう。

 主人公が警察等から逃げながら、旅先で出会った人々を助けては、また逃げていくというロードムービー型の物語は、1963~67年にアメリカで放送されて大人気となった連続ドラマ『逃亡者』や、1994~2001年に雑誌連載された浦沢直樹の漫画『MONSTER』(小学館)を彷彿とさせる。その意味で古典的な物語だが、GPS、ドローン、SNSといった最新のテクノロジーが次々と登場する逃亡劇をめぐる情報戦の描き方は、とても現代的で新しい。

 この、古さと新しさのバランスが絶妙なのが『ESCAPE』の魅力だが、何より面白いのが、善意の描き方である。

 ハチとリンダは困っている人がいると放っておけず、危険を顧みずに助けようとする。また、逃亡先で二人が出会う人々も、心配して助けようとする。そんな善意や優しさの交流が、本作では当然のこととして描かれており、それがとても心地良い。

 現実的に考えると、逃亡中に人助けする余裕なんかあるわけないだろうとも思うのだが、主演の桜田ひよりと佐野勇斗の演技に説得力があるから納得してしまう。

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