物語の後半ではその7年後が舞台となり、美容師となったヨンレと医師になったジェピルの関係が中心に描かれる。ジョンヒは7年前のある事件をきっかけに姿を消し、そこから今まで、ジェピルとヨンレの距離は格段に縮まっていたのだ。そんな中で突然、ジョンヒと再会し、順調だった2人の歯車が狂うことになる。ジョンヒを見つめるヨンレは嬉しさや後悔、驚きの表情を見せたと同時に、深くには不安も覗いていた。それはジェピルと自分の関係性が変化してしまうのではないか、ジョンヒに取られてしまうのではないか、という劣等感もあったのかもしれない。瞳に涙を薄くにじませ、一言では表しきれない心情を静かに訴えかけてくるキム・ダミの表現力に誰もが引き込まれるはずだ。

　また、5月より配信が開始されたドラマ『ナインパズル』では、天才的な犯罪プロファイラーのイナ役を演じた。高校生のときに殺害された叔父を発見した過去がある彼女の元に、叔父の一件と関連する「パズルのピース」が送られてくる。それと時を同じくして、殺人事件が起こり、事件が再び動き出すことになるのだ。本作は、ただその事件を解決していく様子を描くわけではない。叔父を発見した当時の記憶が曖昧なイナを怪しむ刑事のハンセム（ソン・ソック）とイナの心理戦が肝となっている。視聴者にとっても、彼女を本当に信じるべきなのか怪しむべきなのか、最後までわからない面白さがある作品だ。

　さらに、12月19日にはNetflix映画『大洪水』が控えている。舞台は滅亡の危機に直面した地球。予告編では子供を背負い、大迫力で描かれる自然災害を切り抜けようと必死に走り回るキム・ダミの姿が映されている。その短い映像だけでも息苦しい緊迫感がある作品で、ドラマ『悪縁』や映画『グッドニュース』など同じく今年大活躍しているパク・ヘスとどのような化学反応を見せてくれるのか期待したい。

　今年の4月には、キム・ダミが金沢を訪れた際のVlogが所属事務所の公式YouTubeチャンネルにアップされていた。お茶目で自然体な姿を垣間見ることができる動画の中で、俳優志望のファンからの質問に「自分だけの長所をよく理解して、自分なりの方法で表現することが重要だと思う」と語っていた。どんな役でも“自分らしさ”がスパイスになっている、その自由な表現力にはまっていく人が多いのだろう。どこにでもいるような、誰にでも当てはまるような人間味や素朴さもあれば、手の届かないような美しさも見せるキム・ダミ。とにかく2025年の締めくくりとなる映画『大洪水』の配信が今から楽しみだ。

■配信情報
『100番の思い出』
U-NEXTにて配信中
監督：キム・サンホ
脚本：ヤン・ヒスン、キム・ボラム
キャスト：キム・ダミ、シン・イェウン、ホ・ナムジュンほか
原題：백번의 추억／製作国：韓国／製作年：2025年
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