『ばけばけ』トキが感じた運命的な出会い 日本愛全開なトミー・バストウの“ヘブン”
10月28日放送の『ばけばけ』(NHK総合)第22話では、レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)が松江に上陸し、トキ(髙石あかり)と言葉を交わした。
明治23年(1890年)、レフカダ・ヘブンが松江にやってきた。英語教師として江藤知事(佐野史郎)に招かれたヘブンは船で松江に到着。長身で白スーツに身を固め、ハットをかぶったヘブンの第一印象はトキにとって「天狗」で、未知との遭遇に胸を高鳴らせる。
汽船から小舟に乗り換えて浜に降り立ったヘブン。通訳兼エスコート役をまかされたのは錦織(吉沢亮)だ。ヘブンは集まった人々に日本語で挨拶する。「ニホンゴ……ハナシマス」からの「神々の国松江に来てうれしいけん」。たどたどしくも出雲弁を押さえているあたり、事前に教わって練習してきたのだろうか。
ヘブンは「神々の国」と日本の文化にも興味がある様子で、友好的な外国人であることがうかがえる。しかし、実際は友好的どころではなく、この時点でトキたちは察するべきだったのだ。ヘブンの日本に対する熱意が人並外れたものであることを。
第22話の描写は、初めて西洋人と会う人々の反応を、現代的な視点で描いたものと理解できる。歓迎式典に案内されたヘブンは、途中で三味線の音色を耳にすると、音のする方へ行ってしまう。そこは川の向こう側の遊郭で、ヘブンは一軒の店の横で釘付けになっていた。
錦織にヘブンを呼んでくるように言われたトキとサワ(円井わん)は、ヘブンが話す片言の日本語に勘で答える。地名が天国町だから「天国遊郭」。場所を聞かれて、教師志望のサワは天国を「ヘブン(Heaven)」と言い直す。字幕でヘブンの名前は「Heavin」でつづりが違うが、ヘブンにとっては偶然の一致で、親近感を抱いただろうことは容易に想像できる。
ヘブンと日本文化の邂逅はさらに「ラストサムライ」との出会いに続く。ちょんまげ姿の勘右衛門に「サムライ」とつぶやき近づくヘブン。「異国船見張り番」を務め、黒船を憎む勘右衛門にとっては、めぐりめぐって訪れた千載一遇の機会。感激するヘブンに木刀で切りかかるシーンに思わず笑ってしまった。
錦織にとってヘブンは手に負えない外国人で、用意された高級旅館ではなく、古びた街中の宿に泊まる段階に至っては、もはや諦観すら漂う。異文化との軋轢を一番感じているのは錦織かもしれない。
ヘブンのモデルとなったラフカディオ・ハーンは片目を失明しており、また汽車よりも船での移動を好むなど、史実を押さえた人物造形がされている。古くからあるものを好み、夢中になってしまう性格も共通している。
情報量が多かった第22話で押さえておきたいのは、トキとヘブンの出会いだ。手を握ったのは一瞬だったが、トキはそこに何かを感じた。運命のめぐりあわせがあるとして、それは偶然の姿をしていることを示唆していた。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK