『ぼくたちん家』は“かすがい”のような物語に 及川光博&手越祐也が自身の“キャラ”を封印

 絶えず狼狽した表情を浮かべる及川と、人懐っこい笑顔から儚げな表情まで隔てなく見せてくれる手越の関係性を描くヒューマンドラマだとしても十分に惹きつけるものがあるが、本作では訳ありの両親を持つ15歳の女子中学生・楠ほたる(白鳥玉季)が輪に加わることで、さらに幅広い世代を円の中に引き入れるホーム&ラブコメディーへと形を変えていく。

 ほたるもまた、2人とは別の生きづらさを抱えている。担任の作田に電話で呼び出されながらも、彼女は学校に進路希望調査の紙を出しにきて、すぐに帰ってしまう。彼女が再び姿を現した場所はトーヨコ。15歳で1人暮らしする彼女の過去は明らかになっていないが、母親の楠ともえ(麻生久美子)は結局、家に戻って来ることはなく、父の市ヶ谷(光石研)はわずかな登場シーンで、すでにロクでもない父親であることが伝わってきた。

 なんとも居心地の悪い社会で懸命に生きる3人は、三者面談をやり過ごそうとするほたるの突飛な策略によって一堂に会する。そして、切実な思いが充満する部屋で交わされたやりとりを経て、ほたるが玄一に告げた「3000万円あります。家欲しいんですよね。私、あなたを買います」という衝撃的な言葉によって、物語は思わぬ方向へと舵を切った。

 本作の主題歌には、及川、手越、白鳥の3人がカバーしたザ・ハイロウズの名曲「バームクーヘン」が選ばれている。〈たとえでっち上げたような夢も 口から出まかせでもいい/現実に変えていく 僕らはそんな形〉という歌詞は、まさに玄一が口にした「欲しいものはちゃんと欲しがらないと一生手に入らないから」「家が欲しい」という一連のセリフとも重なるようだった。

 自分には見えていないだけで、頭の上にちゃんと存在している“つむじ”のように、現実社会で透明化されているやりきれない悲しみが本作で描かれるのは間違いない。それでも、年齢も境遇もバラバラな3人が一つ屋根の下で、ファミリーサイズのアイスから直にスプーンで掬い取って食べる小さな幸せは、きっと最後まで幸せな時間であり続ける気がしている。不思議な力関係で構成される彼らの会話を聞きながら、これからの日曜の夜はクスッと笑って過ごすことができそうだ。

ぼくたちん家

現代に様々な偏見の中で生きる“社会のすみっこ”にいる人々が、愛と自由と居場所を求めて、明るくたくましく生き抜く姿を描くホーム&ラブコメディ。

■放送情報
『ぼくたちん家』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:及川光博、手越祐也、白鳥玉季、田中直樹、渋谷凪咲、坂井真紀、光石研、麻生久美子
脚本:松本優紀、渋谷凪咲、田中直樹
演出:鯨岡弘識、北川瞳
インクルーシブプロデューサー:白川大介
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:河野英裕、西紀州、岡宅真由美
音楽:東川亜希子、神谷洵平
主題歌:「バームクーヘン」
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
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