寛一郎、“信頼される俳優”としての存在感 『べらぼう』を経て『ばけばけ』で示す深化

 銀二郎が口にする言葉たちはほとんどすべて台本に書かれているもののはずだが、これをどう扱うかは演じ手である寛一郎しだい。その扱い方によっては、銀二郎の印象が変わるのはもちろんのこと、『ばけばけ』の印象にも影響を及ぼすことになるはず。私たち視聴者が晴れやかな気持ちで、「うんうん」とうなずきながら第2週目を終えられたなら、それは寛一郎の功績がかなり大きいのではないだろうか。まだドラマの序盤とあって、作品は安定した走り方をしなければならない。そこで重要なポジションを担ったのが寛一郎というわけだ。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』写真提供=NHK

 そんな彼といえば、多方面から厚い信頼を得ている俳優である。大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)では若き芸能者を好演し、やはりドラマの前半パートの盛り上がりに貢献。公開から一年が経っても話題作であり続けている『ナミビアの砂漠』(2024年)をはじめ、人々の注目の集まる作品の多くに彼の姿がある。まもなく『爆弾』が封切られ、続いて『そこにきみはいて』が公開。前者が非常にエンターテインメント性の高い作品であるいっぽう、後者はそれと対極的な作品だ。観客たちは自身の日常をスクリーン上に見出すことになるのではないかと思う。そして、人気ドラマの映画版としてヒットした『グランメゾン・パリ』(2024年)の公開からちょうど一年後のタイミングに、同じくドラマの映画版である『映画ラストマン -FIRST LOVE-』が公開となる。これだけ記せば寛一郎の信頼度の高さが十分に伝わるはずだ。

『ばけばけ』写真提供=NHK

 俳優としての彼のキャリアはまだ10年にも満たないが、その経験値に関していえば、誰でも10年かければ得られるというものでもない。じつに豊かである。そしてここに、彼にとって初の「朝ドラ」である『ばけばけ』が連なることになった。トキはやがてレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と人生をともにすることになるのだから、銀二郎はいずれ松野家を去っていくことになるはず。悲しい未来ではあるが、そこで“寛一郎=山根銀二郎”が新たにどのようなドラマを生み出すのか、とても待ち遠しい気もするものだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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