宇野維正の映画興行分析

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は洋画冬の時代に差した一筋の光か

 10月第1週の動員ランキングは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が週末3日間で57万7000人、興収8億9700万円をあげて3週連続1位。この成績は前週との興収比で112%。公開3週目にして前週超えというロングヒット作品お約束のコースに入っていて、観客層が原作やテレビアニメの頃からのファン以外にも広がっていることがわかる。公開から17日間の動員は288万500人、興収は43億7200万円。まだまだ数字を積み上げていきそうだ。

 9月の後半から2週連続でランキングのトップ10から外国映画が消えていたが、今週はポール・トーマス・アンダーソン監督、レオナルド・ディカプリオ主演の『ワン・バトル・アフター・アナザー』が8位に初登場して、なんとか3週連続の「もし世界から洋画が消えたなら」状態を回避した。オープニング3日間の動員は8万3900人、興収は1億3100万円。3時間前後の上映時間という共通点もある、 レオナルド・ディカプリオ主演映画として前作にあたる2023年公開の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』との同期間の興収比では166%という数字なので、予想以上に健闘していると言っていいだろう。順位が8位と低めなのは、『国宝』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』など異例のロングヒット作品が上位にずっと居座っているためだ。

 もっとも、日本の実写洋画好き界隈における『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、年頭の賞レース関連作品の日本公開がほぼ一通り終わった初夏くらいから「もう今年は『ワン・バトル・アフター・アナザー』くらいしか楽しみがないよ」と言われていた作品(ビッグバジェット作品に限るなら、自分も同意せざるを得ない)。ポール・トーマス・アンダーソンの過去の監督作や、レオナルド・ディカプリオの過去の主演作が公開された時期と比べても、洋画を取り巻く状況は一段と厳しくなっている。その上で、ここぞとばかりに最初の週末に劇場に駆けつけたのが日本全国で約8万人というのは、多いのか少ないのか。作品の評価は絶賛一色なので、ここからのさらなる広がりに期待したいところだ。

■公開情報
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
全国公開中
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:マイケル・バウマン、ポール・トーマス・アンダーソン
衣装:コリーン・アトウッド
音楽:ジョニー・グリーンウッド
配給:ワーナー・ブラザース映画
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『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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