『チェンソーマン』『呪術廻戦』『いぬやしき』 “東京を破壊し続ける”MAPPAアニメの美学
アニメーション制作会社MAPPAが手がける劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が、大ヒットを記録している。同作はド派手で爽快感あふれるバトルアクションを描いた作品で、東京が壊滅的な被害を受けるシーンがあることも印象的だ。
しかし実はMAPPAは、これまでも東京などの街並みが崩壊するシーンを描いてきた。今回はその“崩壊の美学”に注目してみたい。
『レゼ篇』リアルな街並みとその崩壊
『レゼ篇』のアクションシーン最大の見どころと言えば、やはり“ボム”が大暴れする展開。街中で次々と爆破が巻き起こり、周辺一帯が瓦礫の山と化していく。さらにはデンジとビーム、台風の悪魔も加わって、この世の終わりのような光景が生まれるのだった。吹き飛ぶ車や崩れ落ちるビル、そして瓦礫の粉塵や煙の立ちこめ方まで、街が破壊される模様が丁寧に描かれている。
また大前提として、同作の背景が緻密に作り込まれていることにも触れておくべきだろう。たとえば原作ではレゼが働いている喫茶店の場所が明確には描かれていなかったが、アニメでは水道橋から御茶ノ水のあいだにある女坂の周辺だとはっきり分かるようになっている。
そうして東京の街並みをリアルに描き込んでいるからこそ、それが崩壊していく様子に観客が衝撃を受けるのではないだろうか。
『呪術廻戦』『いぬやしき』で描かれた東京崩壊
その一方、MAPPAが東京の崩壊シーンを描いた作品といえば、2023年に放送された『呪術廻戦』第2期の「渋谷事変」も思い浮かぶ。
同エピソードでは渋谷に「帳」という結界が降ろされ、呪術師や呪詛師、特級呪霊などが一斉に集結し、壮絶な死闘を繰り広げた。戦闘中には高層ビルや駅などの街並みが破壊されていき、挙句の果てには漏瑚の極ノ番「隕」によって巨大隕石まで落下する。
さらに視聴者にショックを与えたのは、“呪いの王”宿儺による所業だ。式神・魔虚羅との対戦中に放った領域展開「伏魔御廚子」は、半径140m以内に絶え間ない斬撃を浴びせるというもので、渋谷の街は更地と化してしまうのだった。
そのほか2017年にMAPPAが制作した『いぬやしき』でも、東京を舞台とした激しい戦闘シーンが描かれる回があった。第10話「東京の人たち」では、犬屋敷壱郎と獅子神皓がお互いに大量のレーザービームを撃ち合い、街が破壊されていくところが描かれていた。
さらに冒頭では、獅子神が飛行機をハッキングし、次々と都内に墜落させる場面も。飛行機の墜落によって都心が火の海となった光景は、人間の悪意がテクノロジーと結びついた現代の悪夢を象徴しているようでさえあった。