多部未華子×江口のりこ×ディーン・フジオカの言葉が沁みる 『対岸の家事』特典映像を解説
本作では「対岸の人」たちが人知れず流す涙や苦労が「海の上の雨」に喩えられる。それが詩穂と礼子の間で静かに共有される場面として頻繁に登場するのがベランダだ。会社からも社会からも離れて、さらに家庭からも束の間隔てられた自分だけの浮遊したスペースで壁越しに交換される本音タイムには、観ているこちらにもセラピー効果があるように感じられる。ディーンも「世界観、トーンが見どころ」と答えているが、まさにその真骨頂が感じられるシーンだと言えるのではないだろうか。“〇〇のお母さん”や“〇〇の妻”という社会から要請された役割であり一側面を一旦脇に置いた詩穂、礼子自身の心からの声が漏れ聞こえてくる。あのシーンのおかげで、本作が恨み節や愚痴に満ち溢れた作品にはならず、自分の至らなさにも向き合いつつ四苦八苦しながら生活を営む一人の生活者の心の内をしっかり代弁してくれるものになっているのだろう。
江口が本作以外にも何度か共演している多部について「主演が多部さんと聞いて“やります”とお返事した。芝居していて楽しい」「多部さんと一緒にやっていると何かしら広がりがある」と話していたのも頷ける。
「舞台裏に迫る徹底ガイド」にはメイキング映像も含まれており、たくさんの子役が出演するがための微笑ましい苦労が取り上げられている。全力で子役をあやす多部や、多部の夫役を務めた一ノ瀬ワタルの子煩悩な様子、子役の演技を絶賛するディーンの姿など、普段はなかなか窺い知れない貴重な瞬間が収められているのも必見だ。「オールアップ集」では、子役たちの自由な姿が垣間見え、癒される。江口扮する礼子の夫役を演じた川西賢志郎が子役をフォローする姿が見事で、「子役が思い通りに動かない部分もあるが、それに大人が合わせていく」という江口のインタビュー中の言葉が思い出される。
出演者が口を揃えて「共感できる」「良い作品」とこぼす本作。ディーンも話していた通り、「エンターテインメントとして楽しめる作品で学びや気づきがある」。そんな「どんな世代、どんな性別や背景の方々にとっても、みんなにとって自分ごととして楽しめる物語」にいかにして息吹が吹き込まれ、どれだけ温かく丁寧に織りなされていたのか。その片鱗に触れると、あらゆる人の痛みを軽視したり無視しない本作を、またなぞり直したくなる。
■リリース情報
『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
10月10日(金)Blu-ray&DVD BOX発売
【Blu-ray BOX】
価格:29,645円(税込)
品番:TCBD-1834
仕様:2025年/日本/カラー/本編464分+特典映像59分/16:9 1080i High Definition/DISC1~2:2層、DISC3:1層/音声:リニアPCM2chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/全10話/3枚組(本編ディスク2枚+特典ディスク1枚)
【DVD-BOX】
価格:24,200(税込)
品番:TCED-8274
仕様:2025年/日本/カラー/本編464分+特典映像59分/16:9LB/片面1層/音声:ドルビーデジタル2chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/全10話/6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)
<特典映像>
・オールアップ集
・舞台裏に迫る徹底ガイド
・初回放送直前!キャストインタビュー(多部未華子 江口のりこ ディーン・フジオカ)
・SPOT集
<封入特典>
ブックレット(16P)
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、緒形直人、田中美佐子
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
音楽:阪井一生(flumpool)
主題歌:離婚伝説「紫陽花」(Sony Music Labels)
プロデュース:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
製作:TBSスパークル、TBS
発売元:TBS/TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
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