『コンフィデンスマンKR』に感じた“違和感”の正体 韓国版ならではの新しさを紐解く

 それに加え、韓国版ならではの面白さは、物語の壮大さにあると言える。日本版では柱に付箋をびっしり貼って相手の特徴をアナログ的に分析していたが、韓国版では監視カメラの映像を確認できる高性能なトラックや指紋を分析できるハイテク機械が出てくるなど、よりスパイ映画のような規模感になっている。また、2話にわたって1つの物語が描かれるため、テンポはゆっくりだが日本版よりも内容が濃く広がりがある。そして何より、実際に特殊メイクに数時間をかけているだけあって、変装がリアルだ。特に第4話でジェームズが田舎の老人に変装しているシーンは、特殊メイクだとわからないくらい肌が本物のようで驚いた。

 そんな独自のポイントがある一方で、物語自体は今のところ『コンフィデンスマンJP』に沿った内容で展開されている。第1・2話では、ダー子たちとは何かと強い縁で結ばれている赤星(江口洋介)にあたるチョン・テス役をチョン・ウンインが演じ、ストーリーの細部は異なるものの、騙された彼が飛行機から飛び降りるクライマックスは同様であった。また、第3・4話では『私の夫と結婚して』で怪演を見せたイ・イギョンが、美術商の城ヶ崎(石黒賢)にあたり、自分の地位を利用して画家の卵たちを不当に働かせるユ・ミョンハン役を見事に演じた。ちなみに、日本版の劇中でダー子が描いた(決して上手とは言えない)フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」はその後のストーリーでも静かに背景として登場する印象的な隠れ小道具だったが、イランも同じように絵を作り上げており、そういった細かな点からも原作ドラマへの愛も伝わってきた。

 また、日本版では詐欺にかけられたことをきっかけに、ターゲットが改心し本当の自分を取り戻すことが多かったが、韓国版では悪党が政界に繋がっていたり、大規模な犯罪を繰り返していたりと日本版よりもターゲットの“悪”度が増しているからか、彼らが警察に捕まるという正義が貫かれて終わる。

 日本版を知っているからこそ当初は違和感はあったものの、観続けてみると、日本のどんでん返し的展開と韓国ドラマらしい爽快な物語展開が合わさって、また違う魅力を感じるようになった。そうやって、「JP」と「KR」を別物として観たり、物語を比較してそれぞれの国のドラマの良さを感じたり、各々様々な角度で楽しむことができる『コンフィデンスマンKR』。物語はまだまだ続いていくが、次は“医者”に扮するようだ。単なるリメイクを超え、独自の味も追加された本作の次なる展開を楽しみにしたい。

■配信情報
 『コンフィデンスマンKR』
Prime Videoにて配信中 毎週土・日に新エピソードを配信
出演:パク・ミニョン、パク・ヒスン、チュ・ジョンヒョク
脚本:ホン・スンヒョン、キム・ダへ
演出:ナム・ギフン
原作:2018年 フジテレビ系ドラマ『コンフィデンスマンJP』
制作:TME Group
共同制作:the fifthwall studio, ghost4
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