林遣都が“もう一人の主人公”に 『明日はもっと、いい日になる』が映す全員の成長物語
また、蔵田と翼の関係性の変化も物語の重要な軸となった。最初はバチバチしていた2人だが、蔵田が翼のことを「この人は馬鹿が付くほどまっすぐでイノシシみたいな人間です」と説明し、また翼も、親になれないのではないかと思う蔵田に「今の蔵田さんならきっと大丈夫です。私が保証します」とサポートする姿勢を見せるなど、良き理解者であり、先輩後輩/バディとなった。毎話最後に繰り広げられる2人のお茶目なやりとりもクスッと笑えて、重すぎない空気感を作ってくれていた。
蔵田は、経験を積んだ先輩としての貫禄と初心を併せ持つ人物で、誰に対しても寄り添える心の持ち主。“児童相談所職員”としての翼の成長はもちろん、“人間”として新たな視点を見出してくれたかけがえのない人物だ。視聴者は、翼の目線で物語に入り込むことができ、蔵田の目線でより深く子どもと親の問題を考えることができた。翼はもちろん、蔵田の存在があってこそのドラマであった。
最後にそんな蔵田を演じた林の演技に触れておきたい。自分の境遇を打ち明けたシーンでは、どこか遠いところを見つめ、思いを馳せるというより感情を押し殺して淡々と話していた表情が今でも忘れられない。目の奥から何か訴えているようで、蔵田に寄り添った林遣都の表現力が際立ったシーンでもあった。そして父親と対峙したときは、すでに大人と大人であるのに、心は当時のままのようにも読み取れて、一緒にお酒を飲むシーンでは言葉の発し方だけでお互いの距離感にずれがあることがわかった。
一方で父親と別れを告げた後、丞たちと家でお酒を酌み交わすシーンはとても晴れやかな表情で、そこには長年の錘がとれたような軽やかさがあった。同じ好物のから揚げを前にしても、これほど感情に差がある。単純な喜怒哀楽には当てはまらない、心を消耗する役柄だったからこそ、林の繊細な演技力が存分に発揮されていて、観ている側としてはその演技に吸い込まれるような感覚を抱いた。
最終回を前に、蔵田が大切に想っている向日葵が、怪しげな男性に声をかけたところ、階段から突き落とされてしまった。意識がない彼女に名前を叫び続ける蔵田と、虐待の可能性がある家庭を探し続ける翼ら職員たち。その男に連れられた怪我だらけの少年と、その家庭は救われるのか。一難去ってまた一難、最後の瞬間まで目が離せない。
児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿描く完全オリジナルストーリーのヒューマンドラマ。
■放送情報
『明日はもっと、いい日になる』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:福原遥、林遣都、生田絵梨花、小林きな子、濱尾ノリタカ、莉子、西山潤 町田悠宇、勝村政信、風間俊介、柳葉敏郎ほか
脚本:谷碧仁(劇団時間制作)ほか
演出:相沢秀幸、下畠優太、保坂昭一
プロデュース:宮﨑暖
主題歌:JUJU「小さな歌」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロデュース:熊谷理恵、三浦和佳奈
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
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