『TOKYO MER』で鈴木亮平が確立させた“リーダー像” 離島医療のリアルな描写も光る一作に
劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』(以下、『南海ミッション』)が大ヒット中だ。8月1日に公開され、興行収入は30億円を突破、公開17日間で244万人を動員している。「TOKYO MER」は、手術室を備えた特殊車両で災害現場に駆けつけ、命がけで救命活動を行う東京都直轄の医療チーム。今作では、鹿児島と沖縄にまたがる島々をカバーする新チーム「南海MER」が登場し、テレビドラマの世界観を大きく広げた。
2021年のドラマ開始から2025年の劇場版最新作まで、4年間にわたって喜多見幸太というキャラクターと歩んできた鈴木亮平。もはや、喜多見という医師がどこかにいるのでは、と思わせる。鈴木は、どのように「医師」としての説得力を見せているのか。
身体のフォルムにまでこだわるストイックさ
鈴木といえば、役柄に応じた徹底的な肉体改造がたびたび話題となる。『HK/変態仮面』(2013年)では、15kg増量してから脂肪を落として身体を作り、漫画に見劣りしない美しいボディメイクを実現。2015年の『天皇の料理番』(TBS系)では、病に侵される役のため20kg減量し、頬のこけた痩せ細った姿で驚かせた。映画『俺物語!!』では体重を30kg増やし、2018年の大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)ではおよそ100kgまで増量、2024年に配信されたNetflix映画『シティーハンター』では、主人公の冴羽獠を演じるために筋肉質でありながらシャープな体型を作り上げた。
身体づくりだけではない。役そのものに“入り込む”のが鈴木の役作りだ。今作『南海ミッション』で共演した江口洋介はこう語っている。「『西郷どん』で西郷隆盛をやられた時は西郷さんになりきって、現場でもどっしり構えて『よかよか!』みたいに(笑)なっていたはず。そういう風に作品全体をとらえて、そのまま芝居に入っていかれるんだなと」。これに対して、鈴木は「現場ではなるべくその役として、自然体でいるようにしています」と答えている。(※1)
鈴木が演じる喜多見は、「待っているだけじゃ、救えない命がある」という信念を持つ救命医だ。爆発現場や崩壊寸前のビル、テロ事件の現場に自ら飛び込んでいく。この能動的な医師像は、鈴木の長身と鍛えられた肉体があってこそ成立する。
医療演技のリアルさも際だっている。新メンバーとして加わった高杉真宙や生見愛瑠からは「現場にもうひとり医療監修の先生がいるようだった」と言われるほどで、実際にオペシーンを演じるにあたっては、タブレットに人体アプリを入れて臓器の位置や必要な処置を理解するなど、細部にまでこだわりを見せた。(※2)