『明日はもっと、いい日になる』が提示した現代の新たな“普通の家族” 子役たちの涙の別れ

 橋本夫妻も丞と同じ気持ちだった。入院中の母親を安心させるため、必死に「いい子」を演じて里親の家に馴染もうとしていた花蓮。しかしながら、橋本夫妻もまた花蓮と家族になるため、「いい親」を演じていたのだ。翼の提案により、互いの飾らない生活をさらけ合った花蓮と橋本夫妻はようやく家族としての一歩を踏み出すことができた。

「普通に怒ったり、普通に泣いたり、普通に笑ったり、普通にいられる場所が家族なんじゃないかな」

 血が繋がっていても、血が繋がっていなくても、家族のかたちは個々で作られていくもので、「普通」なんてものは存在しない。だけど、あえて定義するのであれば、翼が言うように互いにありのままでいられるのが「普通の家族」なのだろう。蔵田が丞の前だけで見せる朗らかな表情がそれを物語っている。

 そういう意味では、花蓮が自分らしくいられた一時保護所も「普通」の家だった。花蓮の退所式でみんなが歌った秦基博の「ひまわりの約束」。〈いつも君に ずっと君に 笑ってほしくて〉という歌詞の通り、児相の職員たちは花蓮がいつも笑顔でいられるように努めてきた。花蓮と同じ時期に一時保護所にやってきて以来、ずっと仲良く過ごしてきた風雅(二ノ宮陸登)と青葉(市野叶)の存在も大きい。花蓮が里親の家を訪れる際、2人からの誕生日を持参していたのは自分を安心させるためだったのではないだろうか。本当は不安だったけれど、いつか自分と同じように一時保護所を出ていく風雅と青葉のためにも明るく振舞っていた花蓮。その思いが、離れ離れになる寂しさからいじけていた2人の心を溶かす。子役たちの演技とは思えない涙の別れに、涙腺が決壊した視聴者も多かったのではないだろうか。

 花蓮は「ありがとう。普通に幸せになるからね!」と言って、これまで過ごした“家“を旅立つ。その「普通」が一番難しいと、大人は誰もが分かっている。分かっているけれど、せめて子どもでいるときくらいは何も考えずに「普通」の幸せを享受できる世の中であってほしいと願わずにはいられなかった。

明日はもっと、いい日になる

児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿描く完全オリジナルストーリーのヒューマンドラマ。

■放送情報
『明日はもっと、いい日になる』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:福原遥、林遣都、生田絵梨花、小林きな子、濱尾ノリタカ、莉子、西山潤、町田悠宇、勝村政信、風間俊介、柳葉敏郎ほか
脚本:谷碧仁(劇団時間制作)ほか
演出:相沢秀幸、下畠優太、保坂昭一
プロデュース:宮﨑暖
主題歌:JUJU「小さな歌」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロデュース:熊谷理恵、三浦和佳奈
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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