楠木ともり、“180度印象が変わった”キャラとの出会い 「足し算すればするほど面白い」
放送中のTVアニメ『異世界黙示録マイノグーラ』。国家運営シミュレーションゲーム『Eternal Nations』を模した異世界に転生した伊良拓斗が、同ゲームのヒロイン“汚泥のアトゥ”とともに邪悪国家「マイノグーラ」を運営していく。
ヒロインのアトゥを演じるのは楠木ともり。あらすじで明かされる設定とは裏腹に、“賑やかでコミカル”な描写が頻出するのも本作の魅力で、それを象徴するのがアトゥの拓斗に対する溺愛ぶりだ。こうした“意外な一面”を持つアトゥを、楠木はどう演じたのか。オーディション当時とはキャラのイメージが180度変わったというその役作りについて語った。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
アトゥへの印象は“180度”変わった
――最初にアトゥ役に触れた際の印象はいかがでしたか?
楠木ともり(以下、楠木): 実は、アトゥのキャラクターを掴めないままオーディションに臨んでいた、というのが正直なところなんです。原作のビジュアルからは、“ダークでミステリアスなお姉さん”という印象を受けていたのですが、蓋を開けてみたら賑やかでコミカルな一面や、主人公タクトへの大きな愛もあって……。真面目な部分と、かわいらしさや“めんどくささ”が渾然一体となっている。端的に言うと、表情の幅がすごく広いキャラクターだなと。そんな幅広い彼女が内包する一つ一つの要素と向き合ってみて、これはかなり難しい役だと感じています。
――オーディションの段階では、まだ手探りだったのですね。
楠木: そうなんです。しかも、今回はスタジオでのオーディションではなく、収録した音声を送るテープオーディションでした。スタッフの方からのディレクションが全くない状態で、自分なりのアトゥ像を作り上げる必要があったんです。オーディションの際のセリフも、コミカルなセリフよりも、パニックになって取り乱すようなシリアスなシーンが中心で。なので、私の中では「ダークで、少しおとなしめ」という方向性で役作りをしてテープを提出したんです。
――そこから、アフレコが始まって印象は変わりましたか?
楠木: はい、180度と言っていいほど変わりました。原作を読み進めても、タクトへの敬愛の念が強いキャラクターなので、厳かな雰囲気の掛け合いになるのかなと想像していたんです。でも、いざアフレコが始まってみると、タクトとの会話劇がまるで“夫婦漫才”のようなテンポ感で進んでいく(笑)。「あ、こっちの方向性なんだ!」と。自分の中で一度作り上げたイメージを切り替えて、アトゥというキャラクターを再構築していく作業は、すごく大変でしたし、新鮮でした。久々にここまでキャラを掴むのに時間がかかったかもしれません。でも、その試行錯誤の過程で「アトゥってこういうところが魅力なんだ」と一つ一つ発見していく作業は、とても楽しかったです。
――楠木さんといえばこれまで数々の作品で、幼い印象の少女から活発な女子高生、クールな大人の女性など、幅広い役を演じてこられた印象です。まさに、アトゥは楠木さんの持つ広い役幅が活かせるキャラクターだと思いますが、演じる上で、特に意識している点はありますか?
楠木: 私の役づくりは、自分の中にあるいろいろな“引き出し”を開けて、そこからいくつかの要素を組み合わせてキャラクター像を作っていくイメージです。まず自分で組んでみて、そこからディレクションを受けて、「ここの要素を少し強めよう」「この要素は外そう」というふうに調整し、演じていく中でその子の特性を掴んでいきます。その中で、普段私はどんなに多面的なキャラでも、根幹にある“軸”はあまりブレさせたくないんです。ブレさせるとしても「この子はこの軸がある上で、こんな意外な一面もあるよね」くらいに留めたいのですが、アトゥは例外でした。彼女の場合は、その軸がブレればブレるほど魅力が増して面白くなるキャラクターなんだと、演じている中で気づいたんです。
ーーかなり“足し算”の役づくりをされたのですね。
楠木:まさに“足し算”でした。全てのキャラがそうではないのですが、アトゥに関しては足し算すればするほど面白いし、それが求められているんだなと。最初は「これはやりすぎじゃないか」と無意識に自分でセーブしてしまっていた部分もあったんですが、トライアンドエラーする中で、「もっと解放していいんだ」と実感してからは、吹っ切れましたね。「こんなのはどうだ!」と思うくらいのところまでどんどん表現の幅を広げて、むしろ挑戦状を叩きつけるような気持ちで収録できてたかなと思います。
楠木ともりにとって“しっくりくる”キャラクター
――さまざまな引き出しを持つ楠木さんご自身が「しっくりくる」「ぴったりハマる」と感じるキャラクター像はありますか?
楠木: うーん、自分ではなかなかわからないものですね。聞いてくださる方がどう感じてくださるかが一番大事なことだと思っているので。ただ、強いて挙げるとすれば、年齢によって変化はしました。デビューしたばかりの10代の頃は、明るくて元気な女の子がやりやすかったです。でも、今は“お姉さん”なキャラクターを担当させていただく機会も増えて、そのような役柄にフィット感を感じられる場面が多くなった気がします。
――今後、役者として挑戦してみたい役柄はありますか?
楠木: それはもう、圧倒的に少年役です。私だけではなく、少年役に憧れている方は結構いらっしゃると思います。ただ、「少年役といえばこの人」というレジェンドの方々がたくさんいらっしゃって、そこに入り込むのはなかなか難しい印象です。例えば、『マイノグーラ』でご一緒させていただいているペペ役の田村睦心さんも、まさに少年役のスペシャリストで、そのお芝居を間近で見ていると「とても適わないな」と感じます。でも、いつか自分にもお任せいただけたら、役者としてすごく光栄なことだと思います。憧れの一つとして、諦めずに練習を続けていきたいです。
――本作で演じているアトゥは、対外向けの威圧的な表情と、タクトだけにみせる敬愛の態度という二面性のあるキャラです。楠木さんはご自身に“二面性”を感じることはありますか?
楠木:今日のようなインタビューやオフィシャルの場では「しっかりしなきゃ!」という意識が働いて真面目なイメージ……ときにはそれを超えてクールな印象を持たれることもあるんですが、本当はそんなことないんです。楽屋では変なこと喋ってたり、ずっとふざけているし、マネージャーさんには「男子小学生を見てるみたい」と言われます(笑)。
――対外的には真面目、プライベートでは“男子小学生”という二面性ですか。
楠木: はい(笑)。最近だと、私がアーティスト活動で所属するレーベルのスタッフさんとのグループLINEがあるのですが、ライブ前に変顔の写真を送りつけたりしていますね(笑)。意図的に二面性というか、ギャップを作っているわけではないんですが、気がついたらオンとオフですごく大きな差が生まれてしまってました。だから、楽屋が他の出演者さんと共有の場合は困りますね……。自分の“男子小学生”な部分を出せず、我慢しないといけないので(笑)。