『ひとりでしにたい』に『ぼくほし』も 脚本家・大森美香が描く“1人と世界”の悲しみ
本作の最大の魅力は、演者の声の魅力を最大限に際立たせる、言葉の美しさと新鮮さだ。その「新鮮さ」は本作特有のものでもあるが、引用される宮沢賢治作品が持つ永遠性ゆえとも言える。本作を観ていて思い出すのは、文学作品が多く登場し、なおかつ俳優の「声」の魅力が存分に活きた2017年のドラマ『この声をきみに』(NHK総合)である。町はずれの小さな朗読教室を舞台に、人生に躓いた不器用な数学講師の再生を描く優しい作品は、竹野内豊、杉本哲太、柴田恭兵ら俳優たちの声の魅力とともに、心に残る名作だった。子どもの時からずっと「心にはいつもぽっかりした空間」があり「この世の完璧でなさ」を憂いていた男は、何を叶えられなくても「世界中を完璧に幸せにする夢」だけは持ち続けると最終話で誓う。そんな彼の純粋さは、本作の白鳥健治の真っ直ぐさとどことなく重なる。
岡田健史の“熱”は今なお燃え続けている 『青天を衝け』に刻まれた平九郎としての人生
たった1話で、どれだけの“ロス”を味わったのだろう。NHK大河ドラマ『青天を衝け』第25回は、小栗忠順(武田真治)、川路聖謨(平…大森美香脚本作品は、1人の人間の悲しみから、世界全体の悲しみを描く。『青天を衝け』(NHK総合)が1人の青年・尾高(渋沢)平九郎(岡田健史/現・水上恒司)の死を通して、時代のうねりに巻き込まれた人々の悲哀を描いたように。本作第5話において、天文部の合宿の最中、江見が「ウクライナのドキュメンタリーなどを見て」着想したという自作のSF小説を披露する。それを聞いた内田(越山敬達)が「でもあながち非現実じゃないのかもしれない。今だっていつ戦争になってもおかしくないし」という感想を口にすることで、1人の生徒の空想の物語は、現代への警鐘となり、平和への切実な祈りとなる。
本作は、スクールロイヤー、制服とジェンダー、いじめ対策推進法、盗撮とアップロード問題、個人情報漏洩と、法律あるいは校則の視点から現代の学校が抱える様々な問題を描く。そこに天文学と宮沢賢治の世界観を体現、あるいは愛する、健治と珠々という2人の人物の眼差しが加わることで、視聴者はより広い視野で現在を見つめることができるのだ。そして、そこから導き出される答えは総じて「寛容であることの大切さ」であるとも言える。さらに、健治たちが屋上に築きつつある豊かな小宇宙とは一線を画した位置に立ち、彼らを静かに観察している、稲垣吾郎演じる理事長・尾碕は、この先彼らとどう関わっていくことになるのか。
何事にも臆病で不器用な主人公が、共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。
■放送情報
『僕達はまだその星の校則を知らない』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:磯村勇斗、堀田真由、平岩紙、市川実和子、日高由起刀、南琴奈、日向亘、中野有紗、月島琉衣、近藤華、越山敬達、菊地姫奈、のせりん、北里琉、栄莉弥、淵上泰史、許豊凡(INI)、坂井真紀、尾美としのり、木野花、光石研、稲垣吾郎
脚本:大森美香
音楽:Benjamin Bedoussac
主題歌:ヨルシカ「修羅」(Polydor Records)
監督:山口健人、高橋名月、稲留武
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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