さらに、“おじさん上司×イケメン部下の歳の差オフィスラブ”というBL作品鉄板の超ドリーム設定に、しっかりと没入させてくれるのが、田中慶司役の庄司浩平だ。高長身（188cm）＋スーツ＋メガネは無敵の組み合わせ。2次元のキャラクターが現実にそのまま現れたかのような逸材だ。

　オーディションで慶司役を射止めた庄司は、現在25歳。風間とは10歳以上の年の差があるが、デビュー5年目とは思えない存在感を放っている。現在放送中の『仮面ライダーガヴ』（テレビ朝日系）では、メインキャストの1人、ラキア・アマルガ役としても出演中。若手俳優の“2大登竜門”とも言われる特撮と「BLドラマ」の両方を同時に駆け上がっていることからも、業界内での注目度の高さは一目瞭然だ。今後は、プライム帯のドラマでも欠かせない存在になっていくに違いない（余談だが、戦隊モノを毎期欠かさずチェックしている友人が「（庄司は）絶対に売れると思ってたよ」と得意気に話していたことを思い出す）。

　さて、ドラマ版『40までに』では、原作の「心臓持たねえ……」レベルの性描写を抑えられているものの、雀が慶司に男性的な魅力を感じる描写はきちんと残した上で、さらに2人の心の機微を丁寧に描いている。

　関係性の変化をじっくり描く姿勢は、『40までに』に限らず、昨今ヒットしたBLドラマ、たとえば『チェリまほ』『みなと商事コインランドリー』（テレ東系）『ひだまりが聴こえる』（テレ東系）などにも共通する要素だ。近年の異性間恋愛ドラマが、不倫や略奪、復讐といった強い刺激を求めがちな傾向の中で、BLドラマは登場人物の心の動きや人間関係そのものの構築に焦点をあて、関係性の原点を思い出させてくれる。だからこそ、BLドラマは従来のファンにとどまらず、幅広い層から支持を集めているのだろう。

　たとえば、部下にマッチングアプリを勧められた雀が、躊躇いながらもゲイ専門のアプリに登録し、マッチした男性に会いにゆくまでのくだりはドラマオリジナル。好きになった人がたまたま同性だった……という始まりが多い（ように感じられる）BLドラマにおいて、主人公が自身の性的指向に自覚的な展開は新鮮だった。しかもそんな主人公が「パックもしたことがなく」て「私服は参観日のお父さんみたい」で「恋人が10年もいない」40歳目前の“枯れた”おじさんという設定なのも、わりと珍しいのではないだろうか（“おじさん”の自覚がありながらも実はモテる主人公は他作品でも見かける）。

　また、休日のデートで雨に降られた2人が、キスできそうなほど近づきながらも未遂のまま終わった展開も、ドラマならでは。思わず我が身を差し出そうとした雀に、「もっと自分を大切にしてほしいな」と一歩踏みとどまった慶司の言葉は、現代の価値観を反映した脚色だ。しかし、そんな慶司の思いやりが、自己肯定感まで擦り減った中年の雀にどう届いているのか——なんとももどかしい！

　原作漫画は好評連載中につき、ドラマ版ならではの結末を迎えることになるだろう。お互いにほんのりと距離を感じつつも、確実に惹かれ合っているドラマ版の雀と慶司が、どのように距離を縮めていくのかが楽しみだ。

■放送情報
ドラマ24『40までにしたい10のこと』
テレビ東京ほかにて、毎週金曜24:12～24:42放送
BSテレ東にて、毎週火曜24:00～24:30放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後第1話から最新話まで独占見放題配信
ネットもテレ東（テレ東HP、TVer、Lemino）にて見逃し配信
原作：マミタ『40までにしたい10のこと』（月刊マガジンビーボーイ連載/リブレ刊）
出演：風間俊介、庄司浩平、平井亜門、高山璃子、ワタナベケイスケ、三石琴乃（声の出演）、平子祐希（アルコ＆ピース）
脚本：齊藤よう
監督：池田千尋、小菅規照
音楽：小山絵里奈
主題歌：Chevon「菫」（Chevon Records）
エンディングテーマ：the shes gone「まぼろし」（UK.PROJECT）
チーフプロデューサー：森田昇（テレビ東京）
プロデューサー：祖父江里奈（テレビ東京）、石神理奈（SDP）
制作：テレビ東京／SDP
製作著作：「40までにしたい10のこと」製作委員会
©マミタ・libre／「40までにしたい10のこと」製作委員会
公式サイト：https://www.tv-tokyo.co.jp/40madeni10/
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