中野有紗が『ぼくほし』で体現する10代の心 『PERFECT DAYS』『この夏の星を見る』を経て

 そんな10代の心の揺れ動きを見事に体現する中野の存在が世間に知れ渡ったのは、ヴィム・ヴェンダースが監督を務めた映画『PERFECT DAYS』(2023年)への出演がきっかけ。古びたアパートにひとりで住むトイレ清掃員の平山(役所広司)の淡々とした日常に差し込む小さな光を端正に映しとった本作において、彼女は平山の日々に思いがけない揺らぎを起こす姪のニコを演じている。

『PERFECT DAYS』©2023 MASTER MIND Ltd.

 突然、アパートを訪ねてきた彼女は、無邪気な言動の中にあどけなさを残しながらも、平山と過ごす日常を通して少しずつ視野を広げていく。家出をした高揚感とちょっとした緊張感が、彼女の静かな佇まいには色濃く反映されていて、初めての芝居とは思えないほど自然体な素顔が映っていた。

『この夏の星を見る』©2025「この夏の星を見る」製作委員会

 さらに、7月に公開された青春映画『この夏の星を見る』でも、中野は複雑な感情が入り乱れる役柄を演じていた。作品の舞台となるのは、緊急事態宣言が発令された2020年。全国各地で新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、青春を捧げるはずだった部活動までも制限されてしまった学生たちは、夜空に広がる星を望遠鏡で捉える“スターキャッチコンテスト”をオンラインで開催しようと試みる。

 やるせない思いで満たされた日々を、色褪せない思い出に変えようとする学生たちの奮闘がどこまでも胸を打つ本作で中野が演じたのは、長崎の五島列島で観光業を営む両親をもつ円華。本編では、劇中を通してマスクを着用しているため、顔の半分ほどが覆い隠されている。それでも、コロナ禍の影響で同じ吹奏楽部に所属する親友・小春(早瀬憩)との間に溝ができてしまい、やりきれない思いを抱える彼女の心細さが、マスク越しでも漏れなく伝わってきた。

 今も脳裏に焼きついて離れないのが、円華と小春が抱え込んでいた思いを打ち明ける防波堤のシーン。眩いほどの夕陽に照らされながら、押しつぶされそうな気持ちがブワッと弾けて混ざり合うふたりの背中には、失われたはずの青春が余すことなく詰まっていた。

 「結局、何も変わんなかった。もうガッカリ」と落胆の色を隠せていなかった北原。そんな彼女も実は、複雑な家庭の事情を抱えていることが公式サイトで示唆されている。

 天文部の夏合宿をきっかけにして、健治の家族に関する過去が浮かび上がるなか、今後はきっと北原の家庭環境にも光が当てられるだろう。中野が彼女の胸の内で揺れ動く感情をどのように表現するのか、ぜひとも注目して観てほしい。

僕達はまだその星の校則を知らない

何事にも臆病で不器用な主人公が、共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。

■放送情報
『僕達はまだその星の校則を知らない』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:磯村勇斗、堀田真由、平岩紙、市川実和子、日高由起刀、南琴奈、日向亘、中野有紗、月島琉衣、近藤華、越山敬達、菊地姫奈、のせりん、北里琉、栄莉弥、淵上泰史、許豊凡(INI)、坂井真紀、尾美としのり、木野花、光石研、稲垣吾郎
脚本:大森美香
音楽:Benjamin Bedoussac
主題歌:ヨルシカ「修羅」(Polydor Records)
監督:山口健人、高橋名月、稲留武
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokuhoshi/
公式X(旧Twitter):https://x.com/bokuhoshi_ktv_
公式Instagram:https://www.instagram.com/bokuhoshi_ktv_/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bokuhoshi_ktv_

関連記事